我が家には電気ポットが無い。 鉄瓶でお湯を沸かし、魔法瓶に入れている。 魔法瓶は中が硝子で、外側にはあるキャラクターが描いてある。これが気に入って買ったのだ。 とは言え、台所に置いてあるものだから、油や調味料が飛んで汚くなっているけれど。 中のお湯が冷めて来ると魔法瓶はキュウウ〜〜と音を立てる。 これが泣き声のようで、我が家では「タマミちゃん」と呼んでいる。 名付け親は主人だ。 名前の由来は勿論、謀図かずおの「赤んぼ少女」から。 原作漫画は読んでいないが、映画の放映を観て以来、魔法瓶が音を立てると、「タマミちゃんが泣いてるよ」と言うようになったのだ。 本当は、絵柄のキャラクターの名前で呼びたかったのに、すっかり定着してしまったではないか。 時々、隣の子供が泣いているのと混同する事があるけれど。
大地震の時は、電気ポットじゃなくて良かったとつくづく思った。 タマミちゃん、大活躍である。 震災を共に乗り越えたタマミちゃんだったのに、本日、大変な事が。 中をさっと濯いで、流しの端っこに置いたのだが、置き方がまずかった。 不安定なところに置かれたタマミちゃんは、バランスを崩して転落したのだ。
ガッシャーン!!
と嫌な音を立てて、タマミちゃんの頭からは、内部ガラスが飛び散った。 破片がキラキラと美しく煌き、タマミちゃんの成仏を願うかのように、華やかに彩っていた。 タマミちゃん……折角震災を生き延びたのに、私の不注意でごめんよ。 片付けをして、主人にメールを入れた。 「タマミちゃんが……お亡くなりになりました。落としちゃったんです。一緒に冥福を祈ってやって下さい」 返事はすぐに来た。
「殺したのか…… (^∧^)」
ちがーう!! 殺してない! あれは事故だったんだー!!
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