妹の職場に泥棒が入ったらしい。
その時妹は残業中だったが、いつもいる筈のその部屋にはおらず、別の部屋にいたらしい。 その話を聞いて、私が言った台詞は次の通りだった。 「どうしてそこにいなかったの。アンタがいれば抑止力になって、何も盗られずに済んだかも知れないのに。あわよくば、泥棒を捕まえる事だって出来たかも知れないじゃん!」 それを聞いて、ごにょごにょ言う妹。 「えっ……でも職場の人達は皆、『泥棒と鉢合わせしなくて良かったね。襲われて怪我でもしてたら大変だったよ』って言ってくれたよ」 ハッ。 そうか、普通はそっちを心配するのか。 「良かったね、皆優しくて」 「ウン」
主人に訊いてみた。 「斯々然々で、私って、もしかして人でなし?」 「まあそうかな。でもその話はあまり外でしない方がいいよ。普通の人はドン引きするだろうから」 そうか、世間ではドン引きされるほどの事なのか。 主人がむっつり押し黙ってしまったので、また訊いてみた。 「ね、怒ったの?」 「ううん」 「もしかして、今ので私の事嫌いになった?」 「ううん、シオンがそういう人だって事は、もう判っているから大丈夫」 そうか、ならいいや。 じゃあ私の事は人でなしって呼んでもいいよ。略してヒトデで。
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