また硝子製品が1つ消えた。 今度はデザート用の器。 これは結婚した時に、実家の納戸に眠っていたのを、親から貰って来た物だ。 どこかからの頂き物だそうで、家に来てからは毎日のように活躍していたため、壊れてしまうとちょっとしょっく。 2人家族なのに3個セットだったから、困る事は無いのだけれど。 今回は床に落とした訳ではなく、洗い物をしていた時に他の食器にぶつけてしまい、結構大きな罅が入ってしまった。 私がしょぼんとしていると、主人があーあと言い、 「シオン、最近よく物を壊すよねえ」 と余計な事を口走ったので、物凄くカチンと来て、言い返した。 「はあ? そりゃ貴方と違って、私は全部洗って棚に仕舞うまでが仕事なもんで、食器に触れている時間が永うございますからね。割る確率だって貴方と比べたら高くなるのは当然じゃないの? 算数苦手なの? 頭弱いの?」 「そうじゃなくて、シオンは物の扱いが乱暴だから……」 「へえそう、私のせいだって事ね。じゃあ貴方が食器洗って、見本見せてよ。言っておくけれど、ちゃんと汚れを落とさないと意味が無いんだからね? 勿論、目が悪いからよく見えなかったとか言う言い訳は無しよ。さあどうぞ!」 捲くし立てているうちにヒートアップしてムカついたので、スポンジを流しに叩き付けようとしたその時、主人が口を開いた。 「駄目〜。お皿洗うのはシオンの仕事☆ だって洗い物嫌いなんだもん……」 上目遣いでこっちを見る。 ……。
可愛いんですけどー!
「反則! 50近いおっさんが可愛い振りして、ずるいぞ! そうやって私の怒りを殺ごうという腹積もりなんだろ! そうはイカの[ピー]」 「やめなさい、そんなの女性が口にする言葉じゃありません! てか可愛いってなんだよ、そんなの意識して出来る訳無いでしょ」 えっじゃあ、無意識に可愛い仕草をしているのか! 正確には、私が可愛いと思う仕草だが。 しかしそれで結果的に私の攻撃を躱しているという事は、自然に身に着けた技なのか。 それはそれで、防衛本能って凄いと思った。
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