前のアパートのフローリング部分は、板目模様の塩ビ床だった。 物を落としても床が衝撃を吸収してくれたので、ここ何年かは、食器類を割る事は皆無だった。 しかし引っ越し先の賃貸は、紛い物ではないフローリング。 本物の木だと思われる。 物を落とせば傷付いて、その部分が凹むのだ。 引っ越して暫くして、主人がやってくれた。 私はいい顔をしなかったのだが、調理器具は壁に掛けておきたいという彼が、台所のタイル壁に取り付けてくれた吸盤がクソだったようで、フックに掛けていたお玉やフライ返しが何の前触れもなく、ガラガラガッシャーンと床に落下したのだった。 隣の部屋でアイロンをかけていた私は、ビックーっとした。 その後、実験として窓ガラスに件の吸盤を貼り付けておいたら、何の負荷も掛けていないのに、翌日あっさり床に落ちていた。 何この不良品……。
そんなある日、パイレックスの耐熱硝子ボウルを、定位置の流しの下に仕舞おうとしたら、つるっと手が滑って、
ガチャーン!
床上10cmから落下しただけなのに、何このフローリング。 前のアパートだったら、もっと高い所から落としても無事だったわよ! 本物のフローリングだと、落とした物は壊れるし、床に傷は付くしでいい事無い。 どうせここを出る時に、修理費を要求されるんだわ……ったく、そんな事ならはじめから塩ビ床にしてくれりゃいいのに。 本物の長所は、夏は涼しいってぐらいかな。塩ビだと暑いから。何となく。
パイレックス買わなきゃ……。 硝子製のボウル、好きだったのに。 金属製の奴だと、泡立てる時にガチャガチャと嫌な音がするのよね。 という訳で、また出費を余儀なくされるのであった。
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