まだ新しい住まいに慣れないためか、最近結構な頻度で頭をぶつける。 しゃがんで探し物をしてから立ち上がったら、対面キッチンのカウンター下面に勢い良くゴッチンとか、ごみ箱のごみを纏めてさて捨てるぞと顔を上げたら、人工大理石の壁にゴッチンとか。 そんなものだから、主人に心配されてしまった。 「シオン、大丈夫?」 「痛いけれど、大丈夫だと思う」 「ううん、そうじゃなくて。そんなにぶつけるって事は、物の位置を認識出来ていないという事でしょ。とうとう来たんじゃないかと思って」 ……痴呆が始まったという事ですか。 主人の顔を見たら、表情が真剣だった。 本気でそっちを心配しているのか! 「大丈夫! 昨日の夕食もちゃんと覚えているし、曜日だってわかるよ!」 と力説しておいたが、聞いているのかいないのか。 「まあ、シオンに何かあったら、ちゃんと最後まで面倒看てあげるよ」 気持ちは有り難く頂いておきますよ……。
手に余る外来種ペットをその辺に捨ててしまうような無責任飼い主みたいな亭主じゃなくて良かった。 でも、手に余るようだったら、無理しないで施設に入れてね……。
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