天上天下唯我独尊

2009年07月17日(金) 収束か終息か

害虫駆除業者のおじさんは、ヤスデ退治には薬剤が有効と言っていたが、私は薬が怖い。
扱い方を間違ったら、こっちが死ぬ目に遭うからだ。(体験済み)
それに使い切らなかった薬は越冬する訳で、使用期限もあるだろうし、管理する自信も無いし、何かがあった時に松本サリン事件の河野さんみたいに「お前はこんな薬品を所持していたではないか、だからお前が犯人だ」と謂われなき疑いをかけられるのも御免なので、なるべく薬は使いたくない。
除草剤すら嫌なので、こつこつ草取りしているぐらいだ。
薬は怖い。自然の物ではないから、耐性種が出来たり、生態系が壊れたり、いずれ自分の身に返って来るのではないか。

薬剤散布をして貰って、数は減ったものの、相変わらずヤスデは家の中に這入って来る。
出来れば家中の穴という穴を塞ぎたいが、侵入経路が判らぬ以上、どうしようもない。
でもこれ以上薬に頼るのは嫌。
ではどうするか。
料理をしていて、ピコーンと思い付いた。自然を汚さぬ方法を。
錆が浮いて捨てようと思っていた薬缶にお湯を沸かし、外に出た。
雨が降っているので、ヤスデが壁を這っている。何で薬で死なないんだ。
沸騰したお湯を掛けると、ヤスデは落ちた。
尚も掛け続け、暫く様子を見た。ピクリとも動かない。
これはいけると思った。

それから毎日、雨が降ると私はお湯を沸かした。
薬缶を持って壁の前をうろついている様子は、不審者か気狂いのようだったろう。
実際、気が狂う寸前だったと思う。常に床や壁、天井にまで目を走らせてからでないと、足を踏み出せない。
「無駄な殺生をして……」
と主人はため息をついた。
私だって本当はこんな事はしたくない。
しかしやらないとこっちの精神が参ってしまう。
母も泊まった翌朝、
「薬缶を火に掛けているからお茶でも入れてくれるのかと思ったら、どこかに行っちゃうんだもの」
と呆れていた。お茶が欲しいならそう言ってくれればいいのに!
伝え聞いた父は笑っていたそうだ。ヤスデは気味が悪いだけで悪さはしないぞ、と。
でも私にとっては、家に侵入される事が悪なのだ。

ある夜、雨が降っていたので懐中電灯を持って外に出ると、小さい物が跳ねている。
雨蛙だった。
ヤスデにお湯を掛けようとしても、近くの蛙にかかってしまいそうになる。
翌日、蛙は数を増していた。
蛙に恨みは無いので、それからお湯作戦は実行出来なくなった。

しかしそれから、家の中でヤスデを見掛ける事は無くなった。
蛙はヤスデを捕食するのだろうか。もしそうなら、来年からは蛙を飼いたい。
というか、ヤスデの発生時期に合わせて雨蛙も生まれてくれればいいのに……!
兎に角、私の心に平安が訪れた。どっとはらい。


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