天上天下唯我独尊

2008年07月24日(木) 真夜中の地震

その時、私は布団の中にいた。
主人が隣りで本を読んでいて、私は灯りが眩しくて眠れないから早く消してくれと言っていた。
普通、地震が来る前には、何らかの気配がする。
地鳴りだったり、空気が揺れたり、他の事に特に気を取られていなければ、大体わかる。
しかし今回は、殆どいきなり揺れた。
そんな事は無い、直前に地震だと言ったと主人は主張するが、そんなのは無意味である。緊急地震速報だって、これでは役に立つまい。
結構揺れてるねえ、と最初は余裕だったのに、揺れは次第に強くなる。
台所で何かが落ちる音がして、恐怖を覚えた。
戸棚の中には、来客用の薄い湯呑み茶碗が積み上げてある。危険だと思ったが、場所を塞ぐので5個全部積み上げてしまったのだ。
あれが倒れたら、横の硝子コップや珈琲カップにも被害が及ぶだろう。
我が家には高級食器は殆ど無く、ブランド物は全て貰い物、足りない食器はどうせ普段使いだからと100均で揃えた。
それでも、勿体無くて使っていなかった食器が使わないまま砕けたら、それはそれで凹む。
食器棚の扉には、硝子が張ってある。あれが割れたら、硝子屋さんで直して貰えるのだろうか。
破壊音を聞きながら、そんな事を考えた。
「大きいな」
自然現象大好きで地震も平気な主人が、漸く起き上がった。
私は自分の人生で過去最大級の地震に、もう泣きそう。
「怖いよう怖いよう」
「大丈夫、大丈夫だよ。ほら、家具が1番少ないんだから、この部屋が1番安全なんだよ」
と主人が宥めるも、そんな事を言われたら、益々泣きそうになる。コドモか。
漸く揺れが収まった。一体どれぐらい揺れていたのだろう。兎に角永く感じられた。
「うっ、うえ、うええええ」
と泣きそうになっていると、主人に「ウルサイ。窓、開いてるよ」と言われた。
そうだ、TV見る!といきなり元気になって居間に行き、TVをつける私。地震速報で震度を確認するのが好きなんだよね……。
NHKは既に、スタジオからの放送に切り替わっていた。
震度5。やはり過去最大@我が人生。

我が家の被害は、思ったよりずっと少なかった。
食器棚の中で湯飲みが倒れ、冷蔵庫とTVの上の物が落ち、魔窟(居間の洋風押入れ)の中で小規模雪崩が起こったぐらいで済んだ。
湯呑み茶碗は倒れていたが、割れてはおらず、他の食器も無事だった。
TVの上の小さな置物は、目の縁がちょこっと欠けてしまい、変な顔になった。片目はポニョみたいにまん丸なのに、もう片目がまりもっこり……ウィンクにもなりゃしない。

暫くNHKを見てから民放に切り替えると、そちらもスタジオからで、見覚えのあるアナウンサーが地震の報告をしていた。
スタジオに向かう途中で心配そうに外に出て来る住民がいた、という事は、呼び出されたのか……ご苦労様。
でもこういう時、男性はいいよね。顔を洗うぐらいで、お化粧しなくていいんだもの。
そう言えば、男性アナウンサーの顔、一寸テカっている……? ちゃんと顔を洗ったのかしら。
他の民放では、アナウンサーの顔が、何だか斑だった。もしかして、アルコール飲んで寝ていた所を起こされたのかなあ。気の毒……。

地震で興奮してしまったが、警戒していた余震も無いし、明日の仕事もあるので、いつまでも起きている訳には行かない。
「僕の実家の被害も気になるけれど、今電話する訳には行かないからな。明日にしよう」
「あら貴方、こないだの地震の時、私には、すぐに電話して来たのに〜」
「だって、シオンが家に1人で泣いているかと思って」
……それは、私を心配してくれたって事だと思っていいのかな。


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