生命保険会社から、封書が届いた。 様々なお知らせの中に、こんなアンケートがあった。
「あなたの将来の夢は?」
参考資料も付いており、子供に人気なのは食べ物屋さんやスポーツ選手だとの事。 私が子供の頃とさほど変わりは無いが、昔は野球選手が圧倒的人気を誇っていたのに、今はサッカーが人気だもんなあ。 「で、貴方の将来の夢は?」 と主人に訊いてみた。 「食べ物やさんかなあ、やっぱり。自分の好きなようにやってみたい」 しかし、主人の夢を応援出来ない私。 「ふーん……。でも、貴方1人でお店を仕切るのも大変だろうし、人を雇ったら万が一若い子と不倫なんて心配もあるし、私が手伝わなきゃならなくなるよね? 私、接客業は全く不向きなんですが」 「不倫て……それはないでしょ」 呆れる主人に、私は言い放った。 「何が起こるかわからない、それが男と女ってもんでしょ。確固たる意志があるなら兎も角、いや貴方の意志の力を疑う訳ではないけれど、可能性は全くゼロではない。だから、無いとは言い切れないのよ」 私の言葉に主人は些か気分を害したようだが、それは仕方ない。 「いいよ、僕の夢は諦めるよ。シオンに接客が無理だという事は、よくわかっているし」 彼に夢を諦めさせるのは気が引けるが、夫婦の危機を招くよりは良い選択だと思う。 「よし、じゃあ代わりに、私の夢を書くわね。私の将来の夢は、
世界大統領!」 流石にそれは馬鹿にし過ぎだろう、と彼がアンケート用紙を取り上げ、さっさと「食べ物屋さん」と書かれてしまった。 別に馬鹿にしたつもりは無く、私は本気なんだけれどな……。
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