翌日は、朝から温泉に浸かって、滑滑な自分の肌を堪能した。 ああ、この状態がずっと続けばいいのに。
夕食のように豪華な朝食を摂ってお腹一杯になると、荷物を纏めてチェック・アウトした。 今日は我が家に泊まる事にしたので、ゆるゆると帰る事にする。お昼頃に着けば良いだろう。 折角なので、近くのテーマパークに行く事にした。こういうのは地元にいると、却ってなかなか行かないものである。バッキンガム宮殿の衛兵と写真を撮りたがるのは、観光客だけというのと同じである。エゲレス行った事無いけれど。
平日の昼間なのに、結構客が多かった。まだぎりぎり夏休みなのか。 敷地内を、汽車の形をした乗り物が走っている。絶対乗るぞ。ああいうの、大好き。 石碑の文字を読んだり、写真を撮ったりして、乗り物の到着を待っているところに、友人の携帯電話が鳴った。 こちらに背を向けて電話に出る彼女の様子を見て、ピンと来た。 男だな。 しかしすぐに切れたらしい。 自分の携帯を取り出してみた。アンテナは1、2本立つが、向きによっては圏外の表示が出る。 再度、電話が鳴った。しかしすぐに切れる。 もういいや、と彼女は電源を切った。 まあ、殆ど圏外だし、切っといた方が鬱陶しくなくていいかもね。
テーマパークは、なかなか面白かった。綺麗だし。 中をぐるりと見て回り、広い裏庭を散策し、土産物屋で小物とお菓子を買った。 それにしても、今年は虻が多い。土産物屋の中でもブンブン飛んでいた。刺されると痛いらしいので、ジーパンで来て良かったと思った。 裏庭では虻には遭わなかったが、矢鱈でかい茸と蛞蝓に遭遇した。茸は兎も角、私の親指よりも太い蛞蝓は気持ち悪かった。
敷地外の駐車場に戻って、電源を入れた途端、また彼女の携帯電話が鳴り出した。 ス、ストーカー……? まさか、ずうっと掛け続けていた訳じゃあるまいな。 駐車場では電波が届くらしく、二言三言話した後、「じゃあ友達がいるから」と彼女は電話を切った。 彼女の話によると、 「本当に女友達と一緒なのか、証拠写真を送れ」 と彼氏に言われたそうで。 「そんなに嫉妬深いの? うちの亭主なんて、『2人で泊まっておいで』だよ。私が言う前に提案して、送り出してくれたぐらいで、浮気なんて微塵も疑っていないよ」 と私が驚くと、彼女は笑って言った。 「それは信じているからだよ。愛だよ、愛」
そういやこの彼氏、面識こそ無いが、以前友人が遊びに来た時も同じ事を言っていたな。 その時は「電話代わろうか?」と申し出た私だが、今ならわざと、うちの主人とか誰か男性と彼女のツーショット写真を捏造して送り付けてやりたい。 勿論彼女は唯々諾々と写真を送るほど馬鹿ではないが、男を見る目に関しては疑問が残った。 そんな男はやめておけ、との台詞が喉まで出掛かったよ。 色々あったとは言え、よっぽど自分に自信が無いんだな、この男。 因果応報。奪ったものはいつか奪われると、怯えているのか。
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