本を買った。 文庫本だが、この私が、古本屋ではなく普通の本屋で買うなんて。 ハードカバーなら高いからと絶対に買わないが、新潮45シリーズのせいで、箍が外れてしまったようである。
題名に惹かれて買ってしまった「残虐記」。 桐野夏生を読むのは、「OUT」「柔らかな頬」に続いて、これが3作目である。 「柔らかな頬」と「残虐記」に共通するのは、「想像力」というキーワードだ。 作者が敢えて「推理」と呼ばないのは、それが当たっているかどうかが、最後まで明らかにされないからである。 そして、これらの3作品に共通するのは、主婦の失踪だ。 作者自身に逃走願望でもあるのだろうか。
亭主や子供を放り出して自分だけ逃亡しても、そこに幸せな未来が開けているとは、私には到底思えない。 今の世の中、普通に生きるにしても、色々と手続きが面倒だ。 そこから逃れて生活するという事は、日陰者になる事を意味する。 日の当たらない生活って、楽しいの? 一体何の魅力があるの? 私には、全く理解出来ない。 この人の話は、ドキドキして読み進めてしまうが、最後に残るのは、「それで?」という感想だけだ。 読後の清涼感や満足感は、得られない。 勿論、新潮45シリーズの比ではないが(笑)。
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