アパート暮らしなので猫を飼っていないのだが、我が家には何故か、またたびがある。 ちょいと車で遠出をした時に、立ち寄った道の駅で、3本100円の小枝を買ったのだ。 何のために?と訊かれても、困るのだが……。
数は多くないが、近所で時々猫を見かける。 ある日、とっぷり日が暮れてから帰宅した主人が、 「隣りのアパートの裏で、子猫を見かけたよ。まだちっちゃかったから生まれて間もないと思うけれど、2匹いてさ、僕を見た途端に穴の中に、凄い勢いでモジョモジョモジョ!って入って行っちゃった。可愛かったよ〜♪」 と自慢(?)するので、私も子猫見る!と言い残して、外に飛び出した。 暫く探したが、暗かった事もあり、子猫らしきものは見付からなかった。 しょんぼりして家に帰り、 「猫いなかった……。ところで、穴の中って?」 と、飛び出す前に訊くべきだった事を訊くと、点検用か何かのメーターが埋まっているらしい土中の小さな穴の事で、蓋が開いてたらしい。 そんな穴があったとは知らなかったが、主人に聞いたその場所は、既に探してある。 私が行った時には、子猫達はどこかに移動してしまっていたのだろう。 残念だ。
そして今日の昼過ぎ、半日の仕事から帰った主人が、外に猫がいたよ、と教えてくれた。 チャンス到来。 子猫ではないらしいが、試してみる価値はある。 またたびの小枝を1本持って行くと、先客がいた。 小学校中学年ぐらいの男の子である。顔は知らぬが、近所の子だろう。 一応、こんにちはと挨拶して、先客が構っていた猫の顔先に、またたびを突き出した。 猫まっしぐら。というほどでもなかったが、食い付きは良かった。 文字通り、猫はまたたびに齧り付いたのだった。 「それ、何ですか?」 と男の子が質問したので、またたびだと答えた。 「猫、飼っているんですか?」 また男の子に訊かれたので、 「ううん、うちはアパートだから飼っていないの。この猫はあなたのおうちの?」 と訊き返すと、彼も違うと言う。 でも首輪をしているから、どこかのお家で飼われているのだろう。 もっと猫を構っていたかったが、今のご時世、知らない子と一緒にいるところをおうちの人に見られて、万一不審者扱いされるのも嫌なので、 「じゃあ、これ上げるわ」 と言って、すぐに帰って来たのだった。
その話を主人にすると、 「猫がまたたびに齧り付いて来たって? それ、反応おかしくないか? 猫って、またたび嗅がせるとゴロニャ〜ン♪ってなるんじゃないの?」 と不審がっていたが、本当なんだってば。 確かに私も猫が腰砕けになる事を期待していたので、正直肩透かしを食らった気分だったが、以前聞いた話では、猫でも個体差があるという。 でもまだ2本残っているのだ。 他の猫でも実験するぞー。
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