我が家では、電気ポットを使っていない。 お湯は薬缶で沸かして、魔法瓶に入れておく。
いつもは魔法瓶の中身が軽くなったら、お湯を沸かして注ぎ足すのだが、今日は魔法瓶の中が全くの空っぽだった。 そうだ、いい事考えた。 魔法瓶いっぱいの水を汲んで、それを薬缶に移して、火にかけた。
お湯が沸いたので、魔法瓶に移し替えた。 あれ? おかしいぞ。 「シオン、溢れてるよ!」 見ていたダーリンが声をかけた。 「火傷しなかった?」 「うん、かかっていないから大丈夫」 「どうしたの、そんなにお湯を溢れさせて。とうとう呆けた?」 失礼な。 「溢れているのは判ってたの! でもね、予め水の量を量った筈なのに」 そこで、あっと思った。 「ねえ! 水って温まると膨張する?」 「……シオン、義務教育受けた? 戦前生まれ? もしかして、呆け以前の問題?」 「……」 もう、何も言えなかった。
そう言えば、燗につけた日本酒も膨張するんだった。 うちの父が、徳利一杯にお酒を注いで、燗につけたら「零れた!」と騒いで母に馬鹿にされていた記憶が蘇った。 ……遺伝?
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