飴は、齧る物ではなく、舐める物である。 少なくとも私はそう思って来たし、これからもそうである。
しかし主人は違う。 ガリガリボリボリと、音を立てて飴を齧る。 安い飴も高い飴も、同じように食べるので、それが私の神経に障る。 「どうしてもっと、味わって食べないの!」 と私が怒ると、彼は、 「味わってるよう。齧って粉々にした方が、味が口の中いっぱいに広がるから美味しいんだよ」 と反論する。 それは解る。 しかし、粉々にすると、飴は短時間で消えるのだ。 折角の飴なのだから、長時間口の中に入れて置いた方がいいの!と私が幾ら言って聞かせても、彼は絶対に首を縦に振らない。 「い・や・だ。こうやって食べるのが好きなの」 「それじゃ駄目! 飴1個でどれだけ幸せな時間を味わえるかが勝負でしょ。同じ時間で貴方ばっかり飴を沢山食べちゃうなんて、そんなのずるい!」 どこまで行っても、平行線夫婦なのであった。
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