私はトイレで、大便をしていた。 きちんと便座に腰掛けていた筈なのに、何故かそれは真下に落ちず、私の足元に転がって床を汚した。 「ああ……」 悉く的を外れ、服や壁を次々に汚すうんこ達。 しかも軟らかめなので、後始末も大変だ。 「お姉ちゃん、何やってんの。全くもう、しょうがないな〜」 と妹がファブリーズ片手に応援に来てくれたが、まず拭き取らない事には始まらない。 「ごめん……。一寸待って、これ拭くから」 と言って私は半ケツのまま、キャスター付き調味料入れをトイレット・ペーパーで拭き始めた。
そこで目が覚めた。 膀胱が破裂寸前だったので、よろよろと立ち上がってトイレに向かったが、さきほどの余韻がまだ残っていて、 「ああ……トイレ掃除しなきゃ」 とまだ寝惚けていた。 用を済ませながら、パンツの中を検める。 どこにもうんこは無い。汚れてもいない。 そこでやっと、ああ今のは夢だったのだと判った。 良かった……本当に良かった。 布団に戻って、 「ねえねえ、今、とっても嫌な夢見たの〜」 と、寝ている主人に抱き付いた。 安眠を妨害された彼は、一寸迷惑そうな顔をしながらも、よしよしと私の頭を撫でて、また眠ってしまった。
次に起きたら、もう10時だった。 「あのね、あのね」 と夢の内容を話すと、彼は 「そんな変な夢、いちいち報告しなくてもいいよ」 とどうでも良さそうに、且つ呆れたように言った。 「変な夢だったから報告したのに、貴方ってば冷たいわね。でもうんこの夢って、夢占いによると、実はいい夢なんですってよ。便器から溢れるのは、お金がザクザクの夢なんですって。だから今日は、宝籤の換金に行くわよ!」 と私は興奮気味である。 昨年買った、オータムジャンボと年末ジャンボが、番号チェックしないままに置いてあるのだ。 「そうそう、同じうんこの夢でも、うんこを食べる夢は悪い夢で、病気の暗示なんですってよ」 「……。どんな状況だよ、それって」 「……さあ? カレーを食べたら実はうんこでした、とか?」 私は真剣に考えて答えたのに、彼は、うんこを見るような目で私を見たのだった。
買い物序でに、宝籤売り場に寄った。 自分でチェックするのが面倒なので、当籤番号が発表されても、開封しないままの籤を持って行って、売り場の機械で見て貰う事にしている。 全部で20枚だから、悪くて当たり籤2枚か……と思ってカウンターを見ると、そこには当たり3枚と表示されていた。 という事は、末等以外の1枚が! 「おめでとうございます〜、当たってましたね」 私が買うのは連番である。 1等なら前後賞が漏れなく付いて来る。 1枚だけという事は、つまり1等ではないという事か。残念だ。 でも、幾ら当たったのかしら……もしかして、2等1000万!? 勝手に夢を膨らませわくわくしている私に、売り子さんが言った。 「1万円ですね〜、おめでとうございます!」
現実なんて、こんなもんか。
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