私の両親は、福袋は馬鹿が買う物だと言い、欲しい物だけその分のお金を出して買う主義だ。 それは勿論教育方針にも表れており、我々子供達は、福袋という物を知らずに育った。 しかし私は1度だけ、福袋を買った事がある。 確か、小学校4年生の正月の事だった。 従姉妹達が買っているのを見ていたら自分も欲しくなり、親に頼んで、自分の小遣いの範囲内で買う事を許されたのだ。 文房具の福袋で、確か500円程度だったか、とてもわくわくしながら開封したのを覚えている。 しかしそのわくわくは、一瞬で萎んでしまった。 袋の中に入っていたのは、子供の目にも明らかに売れ残りと解る、名前入りの便箋セットとメモ帳と鉛筆だった。 勿論、私の名前ではない。余り一般的な名前ではないので。 所詮、福袋なんて売れ残りの寄せ集めなのだ。 店側が必ず儲かるように出来ているのだという事を理解する、よい教訓となった。
結婚して、義妹が無類の福袋好きと聞いてもフーンと言いつつ、心の中ではだからお金が貯まらないのよと小馬鹿にする私は、もう2度と福袋に手を出す事など無いと思われていたが、今年はどういう訳か、福袋を欲しくて仕方ない。 どうした私、主人の実家行きのストレスで、頭がおかしくなったか。 それとも、初売りで浮かれる人々の熱気に感染したか。 「ねえねえ、見たいお店があるんだけれど」 と、お気に入りのブランドの店舗に主人を引っ張って行き、入り口から中を覗いて福袋をチェックした。 あった。まだ残っている。 1つ2万円か……うう、欲しいけれど、それぐらいはするのね。 結界が張ってあるかのように中に入れないのは、足を踏み入れたらきっと買ってしまうから。 一旦は諦めて店を離れたものの、頭からは福袋が離れない。 「そんなに欲しけりゃ買ったらいいのに」 と、いつも通りの主人の言葉に、我々は店に戻ったのだった。 そして、結界を破ってしまった。 店員さんに、2万円の福袋には5万円相当の商品が入っていると言われ、とうとう購入を決意。 子供の頃から籤運がいいと言われているという主人に選んで貰おうとしたが、 「ああ、あれはね、代理でないと当たらないんだよね。最初に、誰某ちゃんの〜って宣言してから引いたら大当たりが出るんだけれど、じゃあ次は僕の〜って引くと、末等のティッシュ。シオンはもう身内なんだから、当たりは出ないよ。だから自分で選びなさい」 と拒否されてしまった。 仕方が無いので、子供のように、どれにしようかな……とカミサマの言うとおりにして、1つ選んだのだった。
帰宅して開けると、全部で4着入っていた。 うち2着はドンピシャで、私好み&私向きの型&色。 1着は、まあ微妙だけれど着れるかも。 残り1着は、私にはNGな色である。妹にでもやろう。 でも、子供時代の福袋に比べたら、ず〜〜っと満足♪ ダーリン、お年玉をありがとう!!
私だけでは不公平なので、主人にも同額程度のジャケットとコートを買ったのだった。 主人がサインをしている間、カウンターに「1万円以上お買い上げのお客様には海外旅行のチャンス!」とあったので、ふーんと思ってボタンを押したら、いきなり大音量でスロットが回り始めた。ヒィ。 「コラ、何してるんだ!」 と主人に叱られ、ごごごごめんと慌ててストップボタンを押すと、ピロピロピ〜♪と500円商品券が当たった……。 普通はお店の人にいいよと言われてからやるものだろうが!コドモか!?と大笑いされてしまった……うう、だってやってみたかったんだもん。 あんなに大きな音がするとは思わなかったよう。
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