寒くなったので、主人が趣味のお菓子作りを再開させた。
よくTVで、ご主人が趣味で料理や蕎麦を作るけれど、片付けはいつも私の仕事……などと愚痴るご婦人を見掛けるが、何故きちんと片付けさせないのか、不思議に思う。 以前にも書いたが、小学校の頃に先生から言われたように、「家に帰るまでが遠足」なのだ。 「料理を作るのは結構だが、片付けまで責任を持ってやりなさい。それが出来ないのなら作らなくても良い!」と躾ければ良いだけの話だ。 主人の片付けは雑だから、自分でやった方がましというのなら、付きっ切りで片付けの仕方を指示して教え込めば良いだろう。 他にも、美味くも無い蕎麦を大量に打つので、片付けるこちらも大変……という愚痴も聞くが、それならはっきり不味いと言ってやれば良い。 他所から貰った蕎麦なら本人の前で不味いとは流石に言い難いが、何故家族なのに要らんところで変に気を遣うのか、私にしてみれば実に不思議である。 世の奥様方は、何と遠慮深いのだろう。 でも、我慢して無理にストレスを溜め込むよりは、夫を上手く教育し直した方がずっと賢いし、精神衛生にも良いと思うのだが。
主人の作る菓子は大抵美味しいが、私が頼んだ訳ではないので、今回は最後の片付けまでが主人の仕事である。 2つ作って、見栄えが良い方を職場に持って行ったら、いつも通り好評だったらしい。 まあ、只で貰った物を不味いと言う人も、そうそういないだろうが。 「美味しいから、また作ってって言われちゃったよ♪」 と上機嫌で帰って来た彼は、夕食後にまた作り始めた。 すっかり乗せられちゃって……と呆れる私を尻目に、 「『お店開かないんですか』って言われちゃった。『それは退職しろという事か?』って返しといたけどー」 と彼が言うので、私はすっぱりと言い放った。 「お店なんて、私は嫌よ。お店を開いたら、いつかは潰れるじゃない。趣味は趣味で続けるからいいのよ。それに貴方がお店なんて始めたら、私も手伝わざるを得なくなるでしょ」 「シオンは客商売には向かないもんなあ。僕だって勿論、お店なんてやるつもりないけどさ」 その言葉に、私は安心した。 「嗚呼良かった。私、人間相手の仕事って苦手なんだもの。お店の看板娘にはなれそうにないわ」 「看板娘というより、名物意地悪ばあさんになりそうだな……」 何よ、結婚する前には「シオンさんは可愛いおばあさんになるよ、僕が保障する」って言ってくれたくせにー!! でも、意地悪ばあさんという予言が成就しそうな予感……私の理想は、ミス・マープルなんだけどなあ。
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