子供の頃から言われていたが、ダーリンにも言われる。 「シオンは短気だなあ」 まあ、そうかもな。 少なくとも、ダーリンよりは怒りの沸点が低い。と思う。
今日も一寸した事でムキーとなったので、つい 「ねえ、私って短気?」 と確認してしまった。(何のために?) 「うん、とっても短気。どれ位短気かと言うと、こんな短気な人は見た事が無いってぐらい短気」 「嘘っ。幾らなんでもそれは大袈裟でしょう」 「いや、ホント」 ガーン……。 「僕が知っている限り、シオンが史上最短、世界最短だよ。僕の周りはいい人達ばっかりだったから」 「……それって、裏を返せば、まるで 私が悪い奴みたいじゃないか!!」 と叫んだが、皆まで言い終わらぬうちに、ダーリンの掌が私の口を塞いだので、最後はフガフガになってしまった。 「声がでかいっ。どうしてシオンはそうやって、声の限りに叫ぼうとするんだ!? ご近所への体面とかそういうのは無いのか」 とダーリンは笑いながら言うが、私はそれどころじゃない。 「私にとっては体面よりも、私の名誉の方が大切よ! 私に叫ばれたくなかったら、私を叫ばせるような事言わなきゃいいのにっ。それに私は、真夜中や早朝にギャーギャー騒いだりしないもん」 勿論これは、以前アパートの上の部屋に住んでいた夫婦の事である。 「ああ、あれは酷かったよな……。やっぱり別れたみたいだしね」 「えっ、そうなの?」 と私は驚いて訊いた。 「そりゃそうでしょ、2日に分けて、トラック2台だよ? 普通の家庭の引っ越しなら1日で終わらせるでしょ」 やはりそうだったのか……。 「でも引っ越して数日後、ご主人は挨拶にいらしてたじゃない?」 「来たのは旦那さんだけ。挨拶回りなら普通、夫婦2人でやるか、1人にしても奥さんがやるでしょ」 ダーリンはそう言うが、あの家庭では、町内会費を集めるのも、御主人が1人で回っていたので、私はよっぽど奥さんが忙しいのか御主人が優しいかなのだろうと思っていたのだ。 それをダーリンに言うと、 「あり得ない。どう考えてもあの奥さんおかしいよ。旦那は常識的な人みたいだけれど、あんな奥さんを貰ったという点で、駄目駄目だな。僕はシオンで良かったと思うよ、ホント」 ……ええと、それだとさっきの発言と矛盾するような気がするんだけれど。 気のせい?
|