天上天下唯我独尊

2006年02月28日(火) モンブランの呪い

幼い頃、私はモンブランが嫌いだった。
私はモンブランを「蕎麦ケーキ」と呼んでいた。
ケーキの上に蕎麦が載っているのだと思い込んでいたのである。
つまり、食わず嫌い。
「騙されたと思って、一口だけ食べてごらん」と言って食べさせてくれた母に感謝である。
勿論それ以来、モンブランは大好物である。

百貨店の地下には、美味しそうな物が並んでいる。
時々行くと数回に1回は贅沢をして、何かを買って帰る。
1個200円のいなり寿司は、流石に美味しかった。
しかし5個で1,000円なので、滅多に買えない。

先日もふらふらと徘徊していると、これまた美味しそうなショートケーキがちょこんと鎮座していた。
しかも、私の大好きなモンブランで、一寸変わった形をしている。
まるで、硝子の向こうで私を呼んでいるよう……。
隣りの苺ショートと1個ずつ、思い切って買ってしまった。
夕食後に紅茶を淹れて、わくわくしながらケーキの箱を開けた。
ダーリンには苺ショート、私はモンブラン。
「頂きまあす♪」
と口に運んだ途端、私の表情が変わった。
「あれ。シオン、美味しくなかったか」
「うん」
眉間に皺が寄る。
「だってこれ、モンブランの蕎麦部分がバタークリームなんだもん!」
幼い頃は生クリームもバタークリームも大好きだったが、今では生クリームしか受け付けない体になってしまった私。
だってバタークリームって、しつこいんだもん……。
「これイラナイ。貴方にあげる」
と言って、皿ごとダーリンの前に押し遣ると、
「じゃあこっちのケーキをシオンにあげるよ。僕バタークリームでも平気だし」
と交換してくれた。
苺ショートはまあまあだったが、モンブランが見掛け倒しだった事に私は腹を立てていた。
高かったのに!!

そして今日、全国の美味しい物を集めた催事があったので、またモンブランを買って来た。
今度は東京のモンブランだ。
わざわざ東京から来るんだから、不味い筈がない。
そしてまた夕食後に
「頂きまあす♪」
と口に運ぶ。
「……」
「また駄目だったか」
「うん……これもバタークリームだわ」
リベンジならず。
何が東京の人気店だバカヤロー。
これなら近所のケーキ屋の方が100倍美味いじゃないかっ。
「美味しいケーキだなんて嘘吐きやがって、金返せええ!」
と怒りまくる私に、呆れるダーリン。
「本当に文句言いに行きそうで怖いなシオンは……」
杞憂ですよっ。


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