うう、おマタがひりひりする。 指のおマタが。
夕食後、ダーリンにお茶のおかわりを頼まれて、私は台所に立った。 急須の蓋を左手で開け、右手でお湯を注ごうとして魔法瓶を傾けた。 「ギャー!!」 急須の蓋が鈍い音を立てて落ち、ゴロゴロと床を転がった。 「どうした!?」 と言いながらも、何故か彼は以前のように台所に飛んで来てはくれない。 「うう……火傷した」 急須を目掛けてお湯を注いだのだが、何故か私の左手の位置は蓋を持ったまま急須の真上で止まっており、そのままお湯を自分の左手にダバダバと浴びせてしまったのだった。 「またかあ。気を付けなよ」 彼はそれだけ言うと、また向こうを向いてしまった。 一寸……「また」って何よ「また」って。 慌てて冷水で冷やしたが、真冬の水道水は冷た過ぎ、すぐに手が痛くなったので私は水道を止めた。 その時はまだ、手は赤くなっているだけで何とも無かったのだが、暫くするとヒリヒリして来た。 冷やすと楽になるのだが、お湯に漬けると沁みる沁みる。 お風呂が辛かった。
馬油を塗って只管冷やす。 どうやら人差し指と中指の間の付け根にお湯を注いだようで、落ち着いて来るとそこだけ赤みが残った。 あれが沸騰した薬缶のお湯だったら、こんなものでは済まなかっただろうから、魔法瓶のお湯で良かったと言うべきか。 考えながら物事をやると、こういうへまをする事があるのだが、考え事しないでやるのも難しいと思うのだ。
|