2晩連続で、里見八犬伝のドラマをやっていた。 しかし私は観なかった。 八房がいない八犬伝なんてあるかっ。 やはりアレか、TV局としては教育的に宜しくないと判断したのか、獣(以下自粛) 一方、主人は全部観ていた。 「面白かった?」 と私が訊くと、彼はうーんと唸った。 「微妙。NHKでやっていた人形劇の方が面白かった」 「へえー、人形劇なんてやってたの」 「昔、辻村ジュサブローの人形で『新八犬伝』や『真田十勇士』をやってたんだよ。その流れで『プリンプリン物語』とかあったでしょ。そっちは違う人の人形だけど」 「貴方も『プリンプリン物語』観てたんだ」 「……いや、その頃はもう観てない」 そなのか。 私は子供の頃から何故か人形が苦手で、人形劇というものを観なかった。 ぬいぐるみは好きなんだけどなー。じゃじゃ丸とかピッコロとかポロリとか。(古過ぎ?) もしかすると、喋る度に人形の口が顎ごと真下にパカッと開くのが怖かったのかも知れない。
南総里見八犬伝は、小学生の頃に読んだ。 親戚の家に遊びに行った時に、従妹の本を借りたので、子供向けに書かれたものだったと思う。 それでもちゃんと八房は出て来た筈なんだがな……。 最後まで読んだ筈なのだが、私は肝心のストーリーを覚えていない。 何故だろうと考えて、思い当たる節が。
私は小学校高学年で、夏休みに1人で叔父の家に遊びに行った。 夜、私は布団の中で寝そべって、従妹の「里見八犬伝」を読んでおり、叔母と遊びに来ていたその母親と姉は、隣室で話をしていた。 読書に集中していたのだが、やがて叔母が婚家の愚痴を話すうちに泣き始め、私の集中力はすっかり殺がれてしまった。 それどころか襖はばっちり開いているのに、もしかして私、既に寝息を立てている従妹達と一緒に眠っている事にされているのか?という事に気付いた次の瞬間、 「シオンちゃんが眠ってて良かったわあ」 との叔母の声が。 ヒィ、まずいだろこれは。 流石の私も子供心に、ここは狸寝入りをすべきだと察知し、開いた本の上に無理矢理うつ伏せた。 その後数分そのままの苦しい姿勢でやり過ごした私は、寝惚けた振りをして本を押し遣り、布団をかぶって本当に眠ったのだった。
多分、その思い出が強烈過ぎて、八犬伝の内容は全て吹っ飛んでしまったのだろう。 もうとっくに祖母も鬼籍に入り、叔母夫婦は平穏に暮らしている。
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