9月上旬にそれまで住んでいた夫婦(参照1、参照2)が引っ越して以来、上の部屋は空き家になっている。
風呂上がりにトマトジュースを飲んでいた主人が、居間に入って来てこう言った。 「ねえ、上の部屋に誰か越して来た?」 「ええっ、知らないよう。暫く前にハウスクリーニングは来てたけど、引っ越しトラックも見ていないし」 もし上に入居者が入っていたら、夜遅くのドアの開け閉めなどに気を付けないとならない。 「待って。一応見て来る」 と言うや否や私は立ち上がり、自分のブーツを履くのが面倒なので主人の靴をつっかけて外に出た。 ぐるりと窓の方に回って見ると、暗くてよく判らないが、カーテンはかかっていないように見える。 一応、階段を上がってドアを見たが、郵便受けにはガムテープが貼られている。 つまり、まだ誰もいないと言う事だ。 部屋に戻り、主人にそれを報告すると、 「そうか……おかしいな」 と言って、黙り込んでしまった。 い、嫌な予感……。 「ええと、あの、まさか」 恐る恐る聞くと、 「うん。さっき台所で跫が聞こえたんだよね」 「本当に上から? 下とか横とかじゃないの?」 「下からだと、それはそれで怖いと思うが……」(∵我が家は1階) と言いながら、彼は台所の天井を指差した。 「この端っこからあっちの端っこまで、横切るように、パタパタパタって走って行ったんだけど」 や、 やめろおおおお! 「そんな怖い事言わないでよっ。夜中に水飲みに起きて来られないじゃないのさ!」 「だって本当に聞こえたんだもん……」 聞こえても言うなっっ。
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