ある日の事、TVを観ていたダーリンが吃驚した声を上げた。 「何でこいつがこんな所にいるんだ……」 視聴者参加型の番組で、一般パネラーの中に同僚がいたのだ。 「この番組に出るって、上司に報告してないんじゃないのか。いいのか?」 と彼は頻りに言うが、 「別にいいじゃん。仕事サボって出てる訳でも内部事情を暴露する訳でもないんだし、一々上にお伺い立てなくても、そんなのは個人の自由でしょうが」 と、私は思った通りに言った。 実は私、この番組にはダーリンにこそ出て欲しかったのだが、仕事が忙しくてそれ所ではないという事は解っているので、涙を呑んで応募を見送ったのだった。 こっそりダーリンの名で応募しようかとまで考えたが、どうせ本人に知れたら私が叱られる事になるし。
ダーリンはすっかり同僚の事を「こいつ」呼ばわりなので、 「嫌いな人なの?」 と訊いたら案の定、 「飲み会で凹ませてやったら、それ以来向こうから全く話しどころか、挨拶すらして来なくなった」 のだそうで……そりゃただのお子ちゃまではないか。 他のパネラーと違う意見を述べる同僚を見て、 「ほら、こういう奴。特に信念がある訳じゃなくて、自分が目立ちたいがためにわざと他人と違う事を言うんだよな」 と鼻で笑うダーリン……そりゃ益々お子ちゃまだな。 「そういやさっき字幕に出てたけれど、この人私と同い年よね……私もこんな風にお子ちゃまなの?」 と訊いてみたところ、 「まあ、そういうお年頃なのかもね」 とあんまりな回答が。 それって私に対して酷くないかい? 番組の最後、全員で拍手しているというのに、唯1人拍手もせずにむすっとして腕組みする同僚がTVに映っていた……こりゃ愈々お子ちゃまですな。
翌日の職場では、「昨日のTV見た?」が合言葉になっていたらしい。 そして全員の見解として、「やっぱりあいつは駄目だ」だったらしい。 というのも、全く大した発言をしなかったから。 折角TV出演を果たしたのにも拘らず、彼は周囲から一目置かれるどころか、一目下に見られるようになってしまったのだった。
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