何だか眠くなかったので、ごそごそと夜中に起き出した。 居間で家計簿を付けたりレシートの整理をしたりしていたが、天井からゴトゴト音がする。 上の住民もまだ起きているのか……と思っていたら、ドスン!と結構大きな音が。 ガトゴトと家具を移動しているような音に、ドタドタと人が歩き回る音。 こんな真夜中に模様替えか?と思って時計を見ると、2時30分……おいおい。 寝室のダーリンは、明日も仕事なんですけど。 物音で起きないといいけどなあ。
と思っていたら、朝、ダーリンは酷く眠そうに起きて来た。 明らかに寝不足の顔である。 「上が煩くて眠れなかった……昨夜は流石に天井蹴飛ばそうかと思ったよ」 「今日も仕事なのに、可哀相に……いっそ蹴っ飛ばしちゃえば良かったのに!(足が届くなら) 或いは私に言ってくれたら良かったのに。そしたら夜中でも文句言いに行くわよ!」 「だから我慢してたんだよ……シオンはどうしてそう波風立てたがるんだ」 いや、言うべき事はちゃんと言わないと!
辛そうに仕事に出かけるダーリンを見送り、洗濯物を干して掃除をしていると、駐車場に大きなトラックが停まったのが見えた。 少し離れた所にも同じトラックが1台あって、横にはTVCMで御馴染みの、引越し会社のロゴが書いてある。 銀行なら5月と10月に異動もあるらしいが、9月に異動の職種ってある? こんな半端な時期に、しかもトラック2台で引っ越すとは、もしやとうとう……離婚!? 自分達こそ半端な時期にここに引っ越して来たのも棚に上げ、荷物が次々にトラックの荷台へ消えて行くのを、私はカーテンの陰からわくわくしながら見守っていたのだった。
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