日々是迷々之記
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| 2002年05月05日(日) |
アウトドアブーム、逝ってよし! |
5月4日の日記の続きである。
夕方4時頃、ねぎとろを購入しサイトに戻ってきた私はビックリし、そして激しく落胆した。テントの数が昨晩の倍以上になっている。どうみても難民キャンプ場である。ぽつんと離れたところに張ったつもりの私のテントも埋もれていた。しかも、家族連れの巨大テントに囲まれている。しかし、私のテントより海側は起伏があり、テントを張るには適さないはずだ。あんな斜めのところに張ってどうやって寝ているのか謎だ。
むむむ!と眉間にしわを寄せつつも、鍋に米を1合入れ、炊事場に研ぎにゆき、水加減をした。モンベルのアウトドア用座椅子セットを持って、少し離れた芝生に行く。ほんの少しだが人間が目に入らない場所を見つけ、座椅子をセット。傍らにはニッカのポケットボトル、フライ豆、そして先ほど購入したNAVI誌。「愛と欲望のスモールカー」特集。沈み行く夕陽の中で、ポケットボトルをあおりつつ豆をつまみ、車雑誌を読む。私なりの至福の時間だ。
ぼちぼち自然光で文字を追うのがつらくなったころ、私はサイトに戻ってご飯を炊き始めた。ぶくぶく、フゴフゴといい匂いがしてくる。炊けた頃を見計らって火から下ろし、鍋を逆さまにして蒸らしておく。一方でフライパンに鶏チーズフライを入れ、軽く暖める。フライをつまみつつ、S&B粉末わさびを水に溶く。そして、刻みねぎとわさび、ショウユを、まぐろの中落ちに投入。ちょうどご飯もむれたころだろう。カパっとフタを開けるとふわ〜んと炊き立てご飯がニコニコと立っている。久しぶりの鍋炊きご飯は大成功だった。大きなスプーンで大きくかき混ぜ、どさっとネギトロを乗せる。すかさずがふっとかき込む。う!うまい。が、わさびがくる!うまい!ツン!ううう!などとうめきながらあっという間に一合のご飯とネギトロを食べてしまった。
あー、うまかった、うまかったと、横になって、今度はランタンを灯して雑誌の続きを読む。ぼんやりしているとやにわに外が騒がしくなってきた。外を見ると、新たな一家の見参だ。観察する。
父親と母親、小学校低学年とおぼしき男女の子供。お父さんは若き日の郷ひろみ風で、マドラスチェックの半袖シャツに、麻のベストとスラックスのスーツ、ウエストポーチを着用している。お母さんは、100円ショップでよく見るタイプのお母さんで、ロングヘアーを1つにくくり、丸めがね、らくらくジーンズに、お尻が隠れる丈のでっかい犬のイラストが描かれたTシャツを着ている。
傍らの荷物が巨大なのが目を引いた。ご家庭の1間幅の押入の上段一杯分くらいあるのだ。長期滞在だろうか?
彼らがテントを立てる様を観察する。なんせヒマなのだ。彼らのテントはモンベルのムーンライト9。その名のとおり、9人用である。かなり手際が悪い上に、風が吹いている。どうにかこうにか、テントの本体にポール(いわばテントの骨になる棒のようなもの。しなって曲がる。)を通し終えたころ、お父さんが携帯電話を取り出した。
「あのさ〜、ペグって付いてる?ない?つーか要るの?要らないよね。雨降らなきゃ。うん、今から立てるわけ。じゃぁ。」とデカイ声で話している。
オイオイ…。ペグというのは大きな釘のようなもので、テントのカドの金具に引っかけてから地面に突き刺し、テントが動かないように固定するものである。風があるときなどは、まず最初に2ヶ所ほど、テント本体を適当に地面に固定してから張ると張りやすい。そういうものである。それがないというのは何だかスゴイなぁと思いつつ観察を続けた。
案の定、フライシートという、テントをおおう大きな屋根の役割をする布を彼らはかぶせることができず、風でぐらぐら落ち着かないテントのなかに荷物を押し込んでテントを動かないようにしていた。
ペグで固定した上ででもその状況で大型テントにフライをかけるのはちょっとムズカシイのに、素人二人が借り物の巨大テントでペグなしテントにフライをかけるのはまずムリだろうと判断した私は、そのままにしておいた。ちょっと手伝えばできるのなら、フライを固定して置くくらいならするのだが。今晩は絶対雨だし…。
彼らはテントの横に折り畳みテーブルと椅子を出し、卓上バーベキューで肉を焼き出した。風はごんごんと強まり、子供が椅子から離れると子供用椅子が風にあおられてぶっ倒れる始末だ。残り少なくなったペットボトルのジュースが風で倒れ、お母さんが「もう!」とぶつぶついいながら片づけている。こんな状況での外ゴハンのどこが楽しいのか私にはまったく理解できないが、どこの家族も朗らかに大風の中、外でバーベキューを食べている。みんなマゾなんだろうか?
少し疲れた気持ちになりつつ、私はテントのジッパーを閉じ、今度はランタンの明かりを小さくし、MDプレイヤのイヤホンをして陽水のうたに耳を傾ける。
ぽとん、ぽとん。雨が降り出した。雨音を聞きながら、陽水の「傘がない」を聴く。はまりつつ、ああ、眠くなってきたなぁと思い、ランタンの明かりを消そうと上半身を起こした。そのときである。ぼかんとテントに何かが当たった。
「とぉぉぉりゃ〜。」ココロの中で怒りのオクラホマスタンピードが猛る!とにかく一気にマジ切れしてしまい、テントの中から飛び出した。外には小学生くらいのバカガキが6人くらいでボール遊びをしている。私は平静を装いつつ、「もう休んでいる人もいるから、静かにして頂けませんか?日が沈んでから、この場所でボール遊びは非常識ですよ。」と声色を押さえつつガキどもに注意した。
案の定、ガキどもはフリーズしている。やっと気づいたのか、ほろよい母親が、「すいません〜。ほら、あんたら、テントに入っておきなさい。どうもありがとうございました。」と言った。まぁ許すことにした。ここで、「あんたら、おばさんが怒ってるから謝りなさい。」とでも言おうがものなら、叱責罵倒ねとねと攻撃を泣くまでやるところだった。
私の潮岬はここでいったんお別れだ。次は11月の連休にしよう。にわかアウトドアの人たちは暖かくないと出てこない習性がある。私は今度こそランタンを消し、眠った。
翌朝は5時に起き、そそくさとその場を離れた。そして、人がいない方、いない方に逃げ、最短ルートの約1.5倍の距離を走り、家に帰った。
ちなみに、昨晩の「フライを張れなかったにせ郷ひろみ一家」は夜中にテントを放置し、車に逃げ、私がその場を去る時間に時を同じくして、テントを撤収して帰っていった。一体何なんだろう?
「アウトドアブーム、逝ってよし!」私がこのゴールデンウィーク後半で得た結論である。
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