日々是迷々之記
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日頃のフォームの作成のおかげで仕事はスムースに進むようになっていた。今日のような電話の少ない日はさくさくっと仕事が進み、昼食後はメールを2本送っただけでヒマになってしまった。
「何かお手伝いしましょうか?」と課長さんに訊いた。彼女は、「…。悪いんやけど、今までの書類、全部整理してもらっていいかなぁ。」と言った。むむ、そうきたか。まぁ、予想はしていたけれど。
その書類とは過去に海外の取引先に送った書類である。デジタルでもデータが残ってるだろうから、全部捨ててもいいだろって内容だが、こんなものを後生大事に、一メートル四方くらいの巨大なスチールキャビネットにつっこんである。しかも中は一見整然と見えるが開けてみると悲惨だった。会社別に分けるはずなのに、ぐちゃぐちゃ。書類の一部は、別にファイルすることになっているのに、それも一緒に入っている。しかも連番のものをばらばらに入れてある。明らかにとりだした書類を返すときにてきとーに上に乗っけていたのだろう。
私は大きな机に持てるだけの書類を乗せ、会社別に分別。そして、ホッチキスとニッパーで針を外して止め直すのルーティンワークをこなした。途中、若手の営業さんに冗談っぽく「ルーティンワークごくろうさんです。」と言われ、「いや〜、人間のやることじゃないですね。」と思わず本音がでてしまったが、これだけの給料もらって、こんなどうでもいいことができるなんてスバラシイと思えばハラも立たない。例え、上下逆さまにパンチの穴が開いていても、ホンコンのつづりが「HOGN KOGN」になった書類が山ほど出てきても笑って直すこともできるのだ。なんだ、「ホグン、コグン」ってなんて思いつつ。
そこにビリリ〜ンと電話が鳴った。所長がとり、いつものでかいこえで話し出す。「ああ、○○さんでっか?まいど。異動しはったん?」私の派遣元会社からだ。今日は来月以降の更新の話で電話のようだ。「長期的にって考えは変わらないんやけど、2ヶ月更新で行こうかと思うねん。ほなよろしゅう。」とまくしたてると電話を切ってしまった。
オイオイ、3ヶ月ちゃうん?と私はココロでつぶやいた。2ヶ月契約なんて聞いてへんぞ〜と思いつつ、今日はさっさと帰ろうと手を早めた。
家に帰って食事をしていると派遣会社の担当さんから電話があった。二ヶ月ごとの更新ですが、長期的にという点は変わらないので継続しますよね?って感じで話を持ってくる。
そこでわたしはこういった。「長期だけれども、3ヶ月ごとに更新するのは、景気の悪いのもあって一般的のようですが、2ヶ月というのは納得できません。最初の契約時の3ヶ月更新から2ヶ月更新に変わった明確な理由を教えて下さい。私は同じ時期に別の会社から3ヶ月更新で試用期間ナシの仕事のオファーがあったのですが、そっちを蹴っています。なのに2ヶ月更新にされては納得できません。」
すると、「最近は景気の動向もあって、なかなか長い契約は…。」と続けてくる。「長期的にという言葉と矛盾しますよね?」と言った。すると彼は二の句が継げないようだった。そして捨てぜりふだ。「今は景気が悪いですから。何もかも最初の口約束どおりになるとは思わないで下さい。」
それはお互い様だ。それなら、所長に電話したときに、「本人に2ヶ月更新ということで伝えますが、何もかも思い通りになるとは思わないで下さい。」と言うべきではなかったのか。ガキの使いじゃあるまいし。
こんな会話を続けても、ゴハンが冷めるだけなのでこう言って話を終わりにした。「私はただ誠実にやって欲しいと思います。3ヶ月更新なら、継続します。2ヶ月なら継続しません。」
「思い通りになるとは限りませんからね。」と言われて電話を切った。
若いのに礼儀正しい青年だと思っていたのに残念だ。派遣会社にとっては労働者も、派遣先企業も両方お客さんなのに。捨てぜりふはないだろう。
私は間違っていないはずだ。でも何かスッキリした気持ちではないのが不思議だ。
明日には私の進退が決まる。
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