日々是迷々之記
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今日は四国上陸を果たすために5時半に起きた。「青春18切符」という、午前0時から24時間に限ってJRの普通列車に乗り放題という切符を使うのだ。ここ、大阪から神戸、岡山、そして瀬戸大橋を経由して、香川の高松へ。恐らく5時間くらいかかりそうだ。
トーストとコーヒーで朝食を済ませて、てくてくと家を出る。最寄りのJR駅までは25分くらいだ。まだ7時前なので、犬の散歩の人くらいしか歩いていない。クルマもぱらぱらだ。しかし、風が強く、前のめりになって歩いた。「こんなに風が強かったら、瀬戸大橋線は運休かもなぁ…。」と思いつつ。
乗り換えをして、大阪駅で西向きの東海道線を待つ。東から来る電車はどれも雪に覆われて真っ白だ。うむむ。私たちが乗るべき列車は10分遅れでやってきた。やっぱり真っ白だ。ようやく上りきった太陽の光を浴びながら西へ進んだ。40分ほど経つと、海沿いを走る。風が強いので波が泡立っている。
電車は最初の乗換駅に着いた。しかし、出発が遅れたので、本来乗り継ぎするべき電車はもう出ていた。次の列車まで約30分。駅から出てうろうろするがあまりにも寒く、粉雪が舞っているのでふるえながら駅ビルに戻った。まだ9時過ぎなのでかろうじて本屋さんが開いている位だ。とりあえず、暖を取ろうと本屋さんで本を見る。そこで私はトイレに行った。
中では4人くらいが列を作って自分の番を待っている。そこにリュックサックを背負って、帽子をかぶったおばちゃん集団がやってきた。鏡の前に陣取ると、おもむろにジャケットを脱ぎ、セーターや下着をズボンの中から引っぱり出した。「いや〜、厚手のシャツ、2枚着たらのぼせそうやわ〜」と、 まるで誰もそこにいないかのように、下着を引っぱり出したり、しまったりしている。うむむ。私もあと30年もすればこういう人たちと同じ年齢になってしまうのが恐ろしい。なるべく見なかったふりをして、用事を済ませて本屋さんへ戻った。
そこからは4両編成のローカル線で岡山まで行く。これがまさしく地元の人の足なので、いろんな人が乗っている。ビックリしたのは見える範囲に人家がないような駅から、ギャル(死語)が2人乗り込んできたことだ。一人は金髪、黒のロングコートでスェードのホットパンツ(もっと死語)に素足でロングブーツだ。もう一人は白のピーコートに赤のタイトスカート、黒の網タイツにSMの女王ちっくな皮のロングブーツだった。外は小雪が舞っており、日陰には根雪が残っている。それでも素足にアミタイツ!若いってスバラシイ!と感動してしまった。私の横で家から持ってきた年賀状を読んでいたおばあちゃんもギャルを見て「あれま〜」という顔をしている。言葉は岡山弁だったので多分、地元の子らなのだろう。
間もなく岡山に着き、電車は乗客を吐き出した。前出のギャルのケータイがどーのこーの、ブランドがどーのこーのという、大声会話を聞かされた私は身も心もぐったりしていた。そこでふと見ると陣○ラーメンの看板が。ちょっと早いがお昼にすることにした。
これがまた外す。私の人生の中で一番まづいラーメンだった。もちろんその中にはインスタントラーメン、外国の得体の知れないカップラーメンも含まれている。「つゆがぬるくて脂っぽいけど、こくもない」「味の素風味」「麺がやたらと多い」「チャーシューがロウソクくさい」「冷蔵庫から出したてのヒエヒエのワカメがてんこ盛り」これだけでも打ちのめされるのに、「ものごっつ太った化粧くさいオバチャン二人組と相席」なのだ。貧乏ぐせが抜けない私は食べ物を残せないので、豚さんに感謝しながらどうにか食べた。しかし、輪をかけるように、お下げで茶髪のおばちゃんが「失礼シマ〜ス」と明るく目の前を横切るように、割り箸を補充したり、つまようじを補充したり何度もやってくる。「失礼だと思ったらやるな、ボケ!」と心で叫びながらその店を後にした。これで二人1300円なのがイタイ。
ふと見ると地酒を売っているおみやげやがある。悲しみを吹き飛ばすため、私たちは地酒と、白角水割、梅酒、ブラックニッカのポケットボトル、などを購入した。わたしは日が高いうちから飲むことを懸念すると、「もう12時過ぎたからええねん。」とのダンナさんの見解が。かなりやけになっているようだ。瀬戸大橋線に乗り込むなり、白角で乾杯。ポケットボトルをちびちびやっていると、列車は動きだし、気がつくと高松に着いていた。どうやら瀬戸大橋にさしかかる前に眠ってしまったようだ。
飲んで眠って目覚めたら、次は食事なのだ。私たちは迷うことなく駅前の「セルフうどん屋」に突入した。ここはベースのうどんにカウンター上の揚げ物を追加する仕組みだ。わたしは小うどんに、さつま揚げ。ダンナさんはわかめうどんにかきあげ、ゴボウの天ぷらを投入。これ全部で650円だった。揚げ物は1つ70円均一だ。中でもゴボウの天ぷらはひれ伏してしまう味だった。ちょっと甘辛めにたいたゴボウをいかだのように3本まとめてあり、それを天ぷらのころもで揚げているのだ。これだけ仕事をして70円!いいんだろうかと正直思う。岡山のラーメンの仇は高松のうどんで討った。
お腹一杯になったら二人は駅前のフェリーターミナルの待合室の室内展望台でぼんやりした。目前に小豆島、淡路島、島影が多い。風が強いので波頭が白く揺れている。青空、白い波、島影、こんなものを見ていると、ギャルもラーメンもどうでもいいやぁという気持ちになって、ゆっくりヒルネをした。
ここで寝過ぎたので、帰りは強行軍になった。晩の9時までに戻らないといけないのだ。何故ならどっちの料理ショーを見ないといけないからだ。
2300円の切符で往復10時間かけて四国滞在時間は約2時間。一人300円のうどんを食べ、瀬戸内海を見てヒルネした。これがムダかどうかはヒミツである。向き不向きがあるようで、ダンナさんはテレビを見ながらうとうとと眠ってしまったが、私はこうして日記を綴っている。
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