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2007年04月15日(日) ■ |
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妄想族の戯言07。 |
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「おい!トシ何とか言え!!」 沈黙に堪えられずにショウが叫ぶ。それと同時にトシは涙でにじんだ視線を上げた。 さっきまでかみ締められていた口元は、今は片手で覆われている。 目のふちが、眼球が、みるみるうちに紅くなっていく。 その様子に、ショウは何も言えない。 一度開いた口をきゅっと結んで、視線を落とした瞬間。
「ぎゃははははは!!なんだそのひでー顔!」 プーだかピーだか音をたててトシが笑い出した。 涙ににじんでいた目からは、笑いに耐え切れず水が流れ出している。 「やべーー!!鼻水も出そうだぜ、ひひっ。」 といいつつ、すでに鼻水は出た後だった。 またもやショウは呆然としている。 「…おい、ショウお前なんとか言え!」 どこかで聞いたような台詞と共にトシが再び顔を上げる。 パチパチと瞬きを繰り返すショウと目が合う。 大きく息を吸い込んで、トシがまた笑い出そうとした瞬間。
「ぐえ。」 ショウに思いっきり首元を締め上げられた。 「ブッころす!!!」 ギリギリと力任せに締めはじめるショウに、ギブギブとトシが手を叩くのも無視決め込んで、ショウは更に力を込めようとする。
「おい、そのバカそれ以上締めたら死ぬぞ。」 ドアのところで声がした。 ピクリと動きを止めて振り返る。口は大きく開いていた。 「…お前もバカだからわかんねーか。」 ケイが大きな段ボール箱を抱えて立っている。 あぁあぁーとわざとらしいため息をつきながらダンボールを床に下ろした。中には何も入っていない。 口はまだ開いたまま、目も大きく見開いて、年を相変わらず掴んでいるショウは動かない。 大きな目がぎょろぎょろとケイの動きを追っている。 「口とじろ、よけいバカに見える。」
ショウは人形のようにパクパクと口を動かして、ベッドブースを飛び出した。 足元はふらついている。軽く眩暈がするのも無視して、ケイの向いに見下ろすような近さで立ち止まる。 目を開きすぎたからだろうか、それとも泣きそうだからだろうか、ケイが滲んで見える気がした。
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