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| 2004年04月05日(月) ■ |
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| 05+オルフェウスの竪琴 |
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恋人の死を耐え切れず 冥界の神と約束を交わして オルフェウスは再び恋人と会えるかに見えました けれどオルフェウスは約束を守れずに 再び大切な人を失う絶望を味わったのです。
絶望の中 川に身を投げ命を絶ってしまったオルフェウス 全能の神ゼウスは彼の遺した竪琴を拾い上げ 空に上げ星座としてのこしました。
夏の海で夜空を見上げている。 ボンネットの上で紫煙をくゆらせながら 今は何もかもを投げ出して一人で。
夏の暖かな空気が潮風をはらんでまとわりつく。 波の音が心を掻き毟る。 痒くて痒くて気が狂ってしまえたらどんなにか楽だろう。 けれど食欲を満たした後の身体は 何処までも冴え渡り、獣じみている。
あの時 彼の後を追えなかった 彼を失いたくなかったけれど 何故かできなかった。
解っていることだ そうすることを彼に望まれていなかった。
絶望の中 命を絶ってしまったオルフェウス 全能の神ゼウスは彼の遺した竪琴を拾い上げ 空に上げ星座としてのこしました。
夏の空に輝く琴座 オルフェウスの竪琴
川のような星の群れ 天の川のその西のふちでひときわ輝く星 織女のベガを含む琴座の惑星郡。
オルフェウスに置いていかれた竪琴 ルカに置いていかれた俺 川を渡ることの出来ない織女 ルカを追えない俺
「またつくれ…ともだち」
どうやって? 自分の嫌悪する同属を増やすのか? それとも生身の人間と… そうしてまた俺は置いていかれるのだろうか 永遠のような長い時間の中に一人。
寝そべって目を閉じる。 久々の食事だった。 車の運転席にはまだタクシードライバーが座ったままだ。 街からはずいぶんと外れてきてしまった。 このまま戻らず此処で眠ってしまえば楽に死ねるか?
「ケイ」
もう呼ばないでくれ このまま消えてなくなってしまいたい 何も考えずに何も感じずに塵になってしまいたい。
「ケイ」
頭の中で彼の声が鳴り響いている。 耳を塞いでも意味はないのに 痛みを覚えるほどきつく頭を抱えるように耳を塞ぐ。 結局俺にはどちらも出来ないと理解ってる。
「ケイ」
お願いだ!もうやめてくれ!! 追いつめないでくれ! 誰かを望んでいるのに、失うのが怖くて ただ惨めに立ち尽くしている… 独りで生きることも、独りで死ぬことも出来やしない…
「ケイ!」
泣き叫び沈んでいきそうになるその瞬間、声が現実味を帯びる。 引きあげられる、急速に、鮮烈な、でも懐かしい何かに。
「ケイ!」
目を開ける。 満天の星空を背景に、子供が覗き込んでいる。 黒い髪が月の光でつやつやと輝いて見える。
「うちに帰ろう、ケイ」
不覚にも泣いてしまいそうだった。 帰る…という言葉に。 お前を失いたくないと思う自分に。 いつか失ってしまうお前の存在に。 息を切らせ迷わず追いかける、俺とは違うお前に。
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