uchie◎BASSMAN’s life
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2003年08月26日(火) ■ |
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■下北沢のフレンチポップ |
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まったくもって無意味だった自分を否定したくて、足取りはなんとなくレコード屋へ。数え切れないくらいの新譜がひしめき合いならんでいる。見ただけで僕はお腹がいっぱいになってしまった。薬になるような曲を探すだけの我慢が出来ずに、すぐに表へ出た。 そうだ、ヴィレッジヴァンガードへ行こう。小田急沿線に住んでいた頃は行き付けの店だった。週2度は寄って物色しては面白いものを探していた。 店に着くと入り口にはチュッパチャップスを口に頬張った23歳ぐらいのオンナノコが二人立ち話をしていた。僕は彼女達の後ろに入りこみ、掲示板に貼ってあるバンドのメンバー募集の張り紙を見た。以前に比べると随分少なくなっている。“音楽中心に動けて、ACIDMANなどのギターバンドを好む〜”“ストーンズ等〜”ベースの募集は少ない。こういうことには波がある。今、2年前頃組まれたかなりの数のバンドがライブハウスに出ている。メジャーデビューを狙っているバンドの寿命なんてせいぜい2、3年だ。それぐらい経って何もいいことがないとメンバー同士苛立ちは隠せなくなるものだ。 中に入ると、もう22時だというのに結構な人の数だ。僕は何を探すでもなく、なんとなく店内をゆっくりと歩き回った。漫画のコーナーには「BECK」が全巻ひら置きされていた。 “これを読んで熱くなれない人は死んだ方がいい!”その通りだと思った。 音楽誌のコーナーにはかなりたくさんの種類が置いてあった。僕はどれも手にする気はなかった。こんなにたくさん出さなきゃいけないんだろうか。大きなお世話だ。音楽誌は高校生の頃、POP GIREの廃刊以来まともに買ってない。ミュージックライフなんかチリ紙以下と言っていいだろう。 お店の中央の一角には高い本棚に囲まれた空間があって、その中には怪しくいかがわしげな本がたくさん並んでいる。これは別にいけない場所ではなく、この店の真骨頂とも言うべきところだ。精神とか神秘学とか性とかのタブーに近いものが置かれている。 ユングの本なんかも置いてあるが、僕は中でもいかがわしい本を手にした。「アダルト女優の今」。引退後の女優の言葉が綴られている。適当にページを開いて見ると、生い立ちや家族との衝突のことが書かれていた。“生まれたところは、相模原市の○○で〜”なんと僕の実家のあるところと一緒ではないか。かつて小学校1、2年の頃同じクラスにいたオンナノコが18歳頃その道に進んだのが話題になったことがあった。芸名が思い出せない。でもその子とは違うようだ。 高校生の頃、面白がった友達がレンタル屋でその子のビデオを借りてきて、親の旅行中に鑑賞会をひらいた。僕も呼ばれて出席したのだった。当時は深夜番組にも出演する程の人気ぶりだった。小学1年の頃、さらさらとした栗毛色のおかっぱ頭のその子は、目が大きくキリっとしていて清純そのものだった。どこで歯車が狂ったのだろう。彼女がホステスとして勤める銀座の店に、僕の友人が遊びに行ったことがあった。彼女は僕のことは覚えていなかったそうだ。なんだか悲しかった。いや、思い出を捨てなければならない何かが彼女にはあったのだろう。確か母親がいなかった気がする。葬儀屋で働く彼女の父親が、穏やかで誠実に仕事をしているのを見たことがあった。あの子は今どうしてるだろう。幸せになっただろうか。 僕は何も買わずに店を出た。さっき飲んだ今日だけの特別ノンアルコールカクテル“EeL”の味が忘れられない。僕はそれだけで得意げだった。一瞬甘い夢を見たようだ。でたらめなフランス語で歌を反芻しながら帰った。
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