uchie◎BASSMAN’s life

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2003年08月22日(金)
■hasband

ヨシダレコードのライブイベントが渋谷nestで行われた。僕のこの日の焦点はhasbandだけにあった。なぜなら、ボーカルギターの山本光昭、彼が本当のアーティストだからだ。
真夏だと言うのにステージに現れた彼は黒のスーツに白いハット、足元は雪駄という妙な格好。なんだかどこの世界の人とも言えない世捨て人。照れくさそうに深くかぶった帽子の奥には鋭い眼光。
1曲目は“紅、くされ外道”まったく書いてみるととんでもないタイトルだ。しかし、ぜひ聞いてもらいたい。サビに出てくるこの言葉が実にぴったりで、非常に熱くなるのだ。
そう彼は言葉の持つ意味とメロディーの持つ意味を、どの曲でも見事に同化させている。音楽にとって歌詞というのは後付けだったり思いこみな部分が大きく感じて、どんなに偉い事を言っていても嘘っぽく聞こえてしまうことがよくある。楽器のフレーズだってそうだ。主旋律や詞に対して大袈裟過ぎるものは嘘臭く感じる。またそこがうまくいっていたとしても、このひとたちがそんなことするのは嘘臭いと感じるバンドだってある。山本光昭の場合、彼は己の辛さも惨めさも全ては自分の世界にあることを認め、押し付けがましいメッセージや身勝手な理想郷を語ったりはしない。それは詞だけに限らず、ギターの音や立ち振る舞いにも表れているのだ。
だから、このひとの音楽を聴くと自然と心に入り込んできてやさしい気持ちになれたり、背を向けていたことを思い出したり、狂おしく切なく踊りたくなるのだ。
聴きながら、?と考えてしまうような迷いがない。彼はきっと随分長いこと自分
を探してきたのだろう。だからこそ大衆に受け入れられるような普遍性を持ちつつ、独特に発展を遂げた感覚を持ち合わせている。アーティストなのだ。