みかんのつぶつぶ
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さようならをする日が近いということを、私は受けとめることができなかった。知っていたけれど、受け入れることをしないで、現実から逃げようとしていたのだ。
彼に言えないんじゃない。 言わなかったのだ。
いつも私は自分勝手で傲慢で、病気の彼にどこまでもどこまでも甘えていたのではないか。気持ちまでも彼に寄りかかり、結局は彼の気持ちなど聞き入れてやることなんてこれっぽちもしなかったのではないのか。
生きていくための話し合いも、 死んでいくための話し合いも、 残し残されるための話し合いも、 何もないまま私たち二人はただただ、 車椅子を押して押されてという日々を送っているばかりだった。
ただ、その時間がどうにか寂しくなく悲しくなく過ぎていってくれるようにと、 ただただそれだけの想いしかなく過ごしてしまっていた。 明日はもう少し違う日になるのではないかとか、明日はもう少し元気になってくれるだろうとか、明日はもっと優しく接することができるだろうとか。
明日のことばかりを考え、逃げていた。
明日は、終わりに近づく近道だということを忘れて。
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