生きているということは、日々をコツコツと積み重ね積み重ね、泣いていても笑っていても怒っていても喜んでいてもそれは、一日のなかの過ぎたこととして風のなかに消えてゆく。耳に残るのは、春の陽射し集まるベンチでその光りのなかにとりこまれてしまいそうなほど朧な笑顔で呟いた言葉。「そろそろおまえが来るころだろうと思って」私を、待っていた待っていた。