みかんのつぶつぶ
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棺に横たわる姑の顔は、彼と同じ顔だった。義姉も同じことを言っていた。入院し点滴を入れた姑の浮腫んだ顔が、弟である彼もそうであった入院中のその顔とそっくりで驚いたと。そんな短い会話に、悲しみが悲しみを呼び起こしていることを察して義姉と二人黙りこむ。
彼が死んだあと、姑はしきりに「死ぬほど悪いなんて知らなかった。誰も教えてくれなかった」という言葉を口にし、私はそのたびに癇に障ったものだった。そんなことを葬儀の最中お経を聞きながら思い返しているうちにふと、姑は自分の息子が死ぬような悪い病気になっているなんて信じたくなかったのではないかと気づいた。頑固な性格だったうえに老齢でもあったから、誰が何と言おうと息子がそうであるはずがないと思って思いこんでいたのではないのだろうか。母親としての姑の気持ちになり察してみることがやっとできた私は、またひとつ大きな悔いを残すことになった。
みんな必死に生きていたんだ みんなみんな、生きていたのに どうして生きているという時間が限られているということを忘れてしまうのだろう
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