みかんのつぶつぶ
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2004年07月24日(土) ある夏の日



土曜の昼下がり、冷房が効いた病棟の廊下、閉め切りの窓の外は炎天下。昼食が終わりお箸を洗いに流しへ行くと、フルーツを切っている女性の後姿。こんにちは、と声をかけると振り向いたその顔の目には涙があふれてあふれて、いたっけ。
新婚さんでご主人が闘病中。抗がん剤の副作用に苦しむ姿も度々見かけていた。若く可愛らしい奥さん、看護婦さんに励まされたその言葉に涙が出てしまってと、包丁を持つ右手の甲で涙をぬぐっていた。ぬぐってもあふれてくる涙・・・


私もこんな風に泣けたらいいのにと思った。私はこんなに泣けるほど辛くはないのだろうかと思った。私は冷たい人間で、やっぱりどこか欠けていると思ったり。




一階へ車椅子を押していくと、玄関横にある自動演奏のピアノの横に同じ病棟のご夫婦が見えた。脳腫瘍の奥さんは車椅子、そばに佇むご主人、二人が聴き入っていた曲はサザンのいとしのエリー。静かに時間を共有していた。大切な残りわずかな時間。




厳かに、みんな生きていた。
そんなことを感じたある夏の土曜日、昼下がりだった。



いろんな場面を思い出し、こうしてPCの前で過ごす土曜の昼下がり。夏。


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