みかんのつぶつぶ
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「明日、抜糸するって」
明日…抜糸…いよいよなんだ・・・
彼は、なぜか今日はあまり病室にいたがらない。 もともとそうなのだが、今日は特に、だ。 目がトロンとしている、あまり熟睡していないらしい。
「少し眠ったら・・・」
「寝る時間はたくさんあるから、いま眠らなくてもいいんだ」
病室は、一気に3人の患者さんが移動してきて満室になった(笑)
向かいのベッドにいらした方は、脳に出血があり検査でようやくみつけて手術をしたらしい。 戦艦大和に乗務された経験があり、新幹線まで作り上げて引退されたという、 カクシャクとした老人だ。 当時の話しを聞いて、彼は感動していた。 もともと歴史が好きなこともあって、 歴史の生き証人に出会えて、聞くことは知識に触れることばかりで、 感動のあまり目には涙が光っていた。
そういえば、本棚には山本五十六に関する書物が多かったなぁ…と思い出した。
その方は、ゴルフも現役でされているという。 なんとかシングルプレーヤーになりたいのだが、品格が足りなくて…と笑っていた。 いえいえ、多分お歳のせいでしょう(笑)
そんな元気で楽しい患者ばかりではないのが、病室の悲しい現状だ。
隣りの方は、左の脳を手術をして、だいぶ後遺症が残っているようだ。 右の視野が狭くなっていて、言葉も頭の中に入らず飛んでいってしまうようだ、という。 ずっとベッドで横になっていらして、 時々独り言をいっている、と彼が心配していた。 なるべく話しかけてあげようと思うらしいが、 これからの不安をもらしているというし、 精神的ダメージが大きいようだから、 そっとしておいてあげた方がいいよ、と促がした。
辛かった。 お隣りの方を見ていると心が痛む。 脳を患う、という厳しい現実が伝わってくる。
心臓が痛む。チクチクチクチク。
神様… これ以上悲しみを持ってこないでください。 せめて、 生きる喜びを知っている人を、 連れて行こうとしないで下さい。
毎日が、あっという間に過ぎていってしまう。 もう少し、お願いだからゆっくりと過ぎていって欲しいのに。
父の位牌に手を合わせる。 もう少し、待ってよね。 子供達から父親を奪わないでよ。。。
彼にとってのこれからを考える。 私は側にいて、 笑っていてあげることしかできない。
全てを知った彼を、 救うことができる自信が、ない。
生きていこう。 一緒に生きていこう。 どこまでも、側にいてあげる。
お願いだから、生きて。
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