みかんのつぶつぶ
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病室に入ると、ひとりポツンと点滴につながれて、ベッドで新聞を読んでいた。 同室の方は、午前中に退院されたんだ。
「これ、奥さんが書いてくれた」
おしゃべり好きな明るい、ご夫婦だった。 その奥様が、おすすめのレシピをメモして下さったのだ。
まもなく点滴も終わり、身軽になって外のベンチに一服へ。 陽射しは暖かいが、風は冷たい。
「ここで、お花見をするようだね…」
「冗談で言ってたら本当になった…」
古い病院だから、立派な桜の木が病院の敷地内に無数にある。 去年の夏に入院していた時に、その木陰のベンチでよくハンバーガーを食べた。 春には桜が綺麗だろうねぇ…そんなことを話しながら、きっと見ることは無いだろうと思いながら。
でも、桜が咲く頃には、ここを離れることになるかも知れないと、胸がつまった。
この先の、彼への試練を思うと、このまま陽射しを浴びたまま死ねたらいいのにと思った。
廊下でTG先生を見かけたので、痛みについて聞いてみた。
「わからないんですよ。今回の手術は勿論、首の腫瘍とは関係ないところですし、 痛くないからといって、症状が良くなった訳では決してないですからねぇ…」
・・・・・・・(T_T)
もしも、本人の気分的なもので、手術をしたから痛みの原因もとれたと思いこんでいるならば、これからの告知は、ものすごく悲惨だ。
廊下で出会ったF先生は、抜糸をしたら次の治療の話しをしましょうと、彼と一緒だったのもあって、明るく確認するように彼の顔を覗きこんで、言っていた。
「なんで抜糸してからなのかなぁ、いまでもいいのに…」
不可解だと呟く。あなどれない奴だ(笑) 笑っている場合ではないんだけれど、 笑えることには笑いたい。
それにしてもF先生。私の隣りに彼がいることに気が付いて、きっと話す内容を変更したのだろう。 慌てた様子で、もう抜糸はしたの?だって。
「え?…まだ無理ですよ、先生(汗)」
「…!そうだよねー、あはは…(汗)」
自分が切っておいて、それはないよねー(爆) ほんと 見たこともない満面の笑顔で照れていましたね( ̄ー ̄)
でもそれだけ、深刻なんだよなぁ・・・
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