【読書記録】西澤保彦「神のロジック人間のマジック」

ストーリー:気がつくと果てしない原野に立つ学校<ファシリティー>に、さまざまな人種の人間とともに暮らしていたマモル。ファシリティーはほぼ11.12歳の少年少女に不自由をさせなかったものの、味気ない生活に想像を働かせる生徒達。しかしそんな日常に変化は突然、編入生によってもたらされることになるのだった。それが恐ろしい事態の幕開けでもあった。

続けて何冊も読むという読み方はしないものの年に一冊程度は読みたくなるのが西澤氏。ロジックが好みなのですよねー!今回も十分に楽しませていただきました!!それはもういろいろとても面白かったv

まず、それぞれが推理するファシリティという施設についてがとても面白い。そもそもここはどこなのか。日本ではなさそうだけど、じゃあどこと言われても判然としない上に、施設内には不思議な装置がある機会室がある。僕達はなぜここにいて、何をしているのだろうか。冷静な判断をしつつ、それぞれの説明に耳を傾けるマモル。それぞれが考えた施設に対する諸説について、不思議な機械室とロジックを説くという特別授業から秘密探偵なのではないかと推理するハワード<中立>。ここは仮想世界で、現実はまた別の次元にありここにいる自分達は精神体のようなものであるとヴァーチャルリアリティ説を披露するケネス<ポエト>。特殊能力者である自分達が集められたのだと主張するケイト<ユアハイネス>。「この時点でこれだけの論理立てと推理が行われるものなのか…!!」とどの説も興味津々で読みました。結構信じつつ読み進めてみたいきさつもあります。

そして結果から犯人を推理してみせるという午後のワーク授業。これについては、決められた班であるマモル・ユアハイネス・ハワードの三人が、ああでもない、こうでもないと頭をひねる。これがこうだから、ああなるのでは、と誰かが提案すれば別の誰かが矛盾を指摘し、時には話を展開する。こんな推理もなかなかに楽しい。

そして本質的な問題、ここはどこで、どうしてここにいるのかという目の前に広がる決して解けない難題。だけど、きっかけはまるで嵐の前の一滴の雨のように突然にじみはじめ、あっという間に炎上する。恐ろしいほどのペースで人がばたばたと倒れ、二度と口を聞かなくなる様子は、なぜという部分がまったく検討がつかないだけに恐怖そのものだった。何かがここにはいるんだとつぶやいたポエト。そして、自分がここに来たときのことを懸命に思い出そうとするマモル。最後の最後にでてきた答えは、残酷だなぁと私は感じた。

推理合戦が三重にもなっていて、それぞれが楽しい。そう、推理することそのものが過程が好き、という方にはぜひともお勧めしたい一冊である。と同時に、西澤氏ファンにはうれしいインタビューも掲載されている。作品だけではなく作家になるまでなどいろいろな内容になっているので、作品をあまり知らないような私も、海外で小説について学んだというエピソードなどはとても面白いなーと思いながら読んだので、これもあわせてお勧めしたい。NO.18■p317/文芸春秋/03/05
2009年08月14日(金)

ワタシイロ / 清崎
エンピツユニオン