【読書記録】角田光代「恋をしよう。夢を見よう。旅をしよう。」

久しぶりにエッセイを読みたくなり、手に取りました。角田さんの著書はちらほら手に取っている程度なのですが、こんな方なのだなぁと実感できるほど具体的なエピソードがたくさん載っていて、身近に感じられた分、読んでみたいと思いました。しかしながら、きっと角田さんの書く小説は大人になったときにじわりと噛み砕けるような感じもある。今はまだ味わえないかもしれない…けれども、このエッセイはどんな方でも面白く読めると思いますv
タイトルのとおり、三部構成になっていますがそれらが中心で大々的に連載したというわけではなく、身近なことをまとめてみましたという雰囲気。思ったより面倒くさがりな方だったんだなぁと、自分のことも考えつつ苦笑しながら読みました。

・洋服と自分と価値
「ブランド物のバッグを持っていても、高めの服を着ていても私が来ていると安く見られる…!」と憤慨しつつも悲しむ様子が目に浮かんだエピソード。自分のイメージはどんなものですか、また、それは年齢とあっていますか?…確かにイメージって大きいです。

・20代前半と、現在の自分
「かっこいい大人はさ〜…!」と語ってきた20代。だけど振り返って今の自分を見つめると、それとは正反対。お仕事をがんばることも大切だけど、自分にとってかっこいい大人って…と振り返っているのですが、この本の随所で、「20代のころをいろいろな人とつまらない議論(ちなみに、私は十分に面白いと思った。小さなことでも話題にして議論できるだけの時間と心と仲間がいたことがむしろいいと思う)をしてよくぶらぶらすごしたものだ」と回想しているのが意外で、興味深かった。角田さんといえば、学歴もあり順調に文芸賞も受賞し…というイメージだったので、ぶらぶらしていた20代。そして今についての自身のコメントになるほどな〜と思わされる。

・おいしいもの
子供のころはだいぶ偏食気味だったものが、恋人に指摘されてだいぶ改善した。今では、おいしいものを食べにいくのが楽しみだし、旅先では一人でもがんばって食べにいく位に食べ物が好きになりました!――というお話。食べ物については全編にわたって出てくるのですが、まず偏食気味だったんだ!という驚き、恋人の指摘で直す覚悟をして実行してしまう意思に感嘆し、だけど今すぐおいしいお店に食べに行こう!といわれても自分の服がいまいちでがっくりしてしまったり。”おいしいもの”からいろいろな角田さんの側面が見られるので、これはぜひ見てほしい。

とにもかくにも、エピソードが実際に「うん、うん」とうなづけるもので、やはり30代も半ばを過ぎてきたということでその実感に重みがあって、見ていて学べるなぁと思うものもちらほらありました。ふっと生活につかれてしまったとき、手にとって読んだら、また「さあがんばろう!」と思えるような気がする一冊。NO.04■p315/ブルーム・ブックス/06/02
2009年03月08日(日)

ワタシイロ / 清崎
エンピツユニオン