闇の底に...Cuckoo

 

 

彼女の涙 - 2002年03月01日(金)

俺が泣いたらどうする?
ぎゅっと抱きしめてあげます
俺は泣かないけどね
知ってます。


昨日の夜中
ネットを繋いで彼と話してたら
ふいに携帯が鳴った。
びっくりして見たら
大切なネット仲間だった。
慌てて電話に出ると
泣きながら何かを言う彼女
言葉がわからない
酔って大声でなく彼女の言葉は
アタシには理解できなかったのだけど
時々聞き取れる言葉で苦しみを感じた。

彼女は辛い恋をしていて
その恋を忘れる為に自分を求めた人と付き合いだした。

水鳥はその男が大嫌いだった。

逢ったことも無いその男を嫌悪した。
奥さんがいて
彼女の友達とも付き合ってて
愛人が何人もいて。
躁鬱病で仕事を休んでいたその男は
自分の女を束縛し殴る

それでもなぜ
そんな男に女が沢山いるのだろう
水鳥には理解できないけど
彼女は彼を愛してしまった。

淋しかったからかもしれない
辛かったからかもしれない
誰かを求めていたのだろう

そして求められて
すがりついたのかもしれない

のめりこんでいく彼女をどうする事もできなかった
友達とも付き合ってるから必ず問題が起こるよ
そう何度か忠告してしばらくした時
やっぱりばれておおもめ
その友達と縁を切り彼との関係を続けた。

失ったものは信頼と友情
それでも彼女は彼にすがったのに
今になって急に彼は


まるで吸った後のタバコでも捨てるかのように
彼女を捨てたんだ。


アタシはそんな奴が大嫌いだった
だからと言って彼女にその事を告げた事は無い
彼女がどれだけ彼を必要としているのかを
愛しているのかを知ってしまっていたから。

いつかこんな日が来ることは
初めから知っていた
それでも前の彼氏のコトを忘れる為には
どうする事もできなかったんだろう

そしてアタシも
他の友達も
強引に止める事ができなかった。


それはアタシ達の罪。


突然捨てられた彼女は酒におぼれる
他に眠る方法が思い浮かばないんだ
何度かMSNでくだらない話をして
気を紛らわせて寝かしてた
それでも辛さに変わりは無い
一人で住んでた彼女はもう
一人でいたくなかったのだろう
誰かの声が聞きたかったのだろう
そしてその相手が見つからず
アタシに電話をしてきた。

誰かに話せるうちはまだ大丈夫
そう思ってる
だからアタシに電話してきてくれてよかった。
何もする事はできないけど
ただ話を聞いていた
いや
ただ泣き声を聞いていた。

辛い恋ばっかりだねぇ
そう言った。
彼女はこう答える

『こんなんばっかりだ 
 いらなくなったからってすぐ捨てられるんだ』

そしてまた泣く

辛い恋ばっかり選んでしてるみたいだ
そう笑ってあげた
そうだね と泣きながら笑った

本当はね
辛くない恋なんて無いんだよ

そんなコトは言わない
言えない。

彼女に水鳥の恋の話をしたことはない
離婚の話はして
子供にも逢わせてる

だからこそかもしれない

言わない


水鳥は徹底して彼女の聞き役にまわってる
話したい事がなるのなら水鳥は必ずココにいる
そう態度で示してる

アタシはココだ

それは些細なことかもしれないけど
小さな小さな安心を彼女にあげたくて。
話せる相手がいるってコトは
すごく大切だろう。

知り合って今まで
水鳥は彼女に言いつづけてる
いつもいるから
ココにいるから
話したくなったらおいでと。

そんな相手がまだ数人いるんだ
その人たちは
煮詰まっちゃったりすると水鳥と話をしようと出てくる
それまで居なくても
話をしてなくても
ふと水鳥の前に現われる
そして泣くんだ

水鳥が話したい事があっても
居ないのは哀しいけどね。

死にたい
彼でなきゃ嫌なんだ
もうダメだ
そう泣いた彼女

最期に涙声で笑って
こう言った

一人でいるのが限界だった
すっきりしたよ

泣けるうちはまだ大丈夫だよ
心が壊れてないんだよ
心がまだ悲しみを表せれてるんだ
そう思った。
そして今日もまた
一人で悲しみと戦うのだろうか

一緒に頑張ろうね
そう言った。


彼が言った
もし俺が泣いたらどうする?
水鳥が答える
ぎゅって抱きしめてあげるさ
彼が言う
俺は泣かないんだけどな
水鳥が答える
知ってる

アタシはアナタに笑っていて欲しい



辛くない恋を知っていますか?

誰か


泣かない恋を知っていますか?



アタシはまだ



辛くない恋に




であった事が無い。







                        水鳥。


...




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