**Secret**..miho
カテゴリー
2004年11月20日(土)
私にカテゴリーの精神を植え付けたのは、主治医だった。

「あなたはあなただから、あなたらしく生きればいいんだよ。」

例え病気であっても、自分である事には変わりがないから、
自分らしく生きる事に、誇りを持っていていいんだよって…
人生における大きな分岐点で、主治医に教え諭された事だった。

でもね、本当は、そういう意味じゃないんだって、知っていたよ。

「あなたは病気だから、他の人とは違うんだよ。
 だから、他の人と同じようには生きられないんだよ。」

本当は、そう言い聞かされていたんだ。
今でも私は、その訓えを忠実に守っているよ。
私は病気だから、他の人と同じカテゴリーには属する事ができない。
私にとって、私だけのオリジナルのカテゴリーというものは、
他との区別によって、その存在を確信できるものだった。
私にできる事は、そこに意義や価値を見出す事だけ。
どんな境遇に置かれても、自分らしく生きていくべきだと言うのなら…

じゃないと、こんな妥協ばっかりの人生に耐えられるはずがないよ。
自分は他人とは決定的に違うんだって、割り切れていないと…

たぶん、たいていの人たちは、自分が無意識のうちに築いている
自分らしさというカテゴリーの中で生活していながらも、
それ以外の、もっと大きな、自分にとって利益となるカテゴリーに
属していたいと願っているはず。そこに居れば安心していられるから。
それこそ、自分らしさを保つ事のできる居場所のようなもの。
そうやって、脆くて不安定な「自分らしさというカテゴリー」を
大切に防衛しながら生きている生き物だから。
周囲と比較する事でしか、真の自己を見出せないんだ。

それじゃあ、その「自分らしさというカテゴリー」の中でしか
生きられない人間は、どうすればいいの??
常に自分自身と闘い続けていなくちゃいけない。
周りは檻で囲まれているの。
向こう側で生きている他者を求めてしまわないように…
逃げ出す事もできない。
これ以上に傷つく事を恐れて、背を向ける事しかできずにいるよ。

そうやって、無力な自分を思い知らされるんだ。
そうやって、苦しみ続けながら生きていくんだ。


ねぇ、この先、ぐんぐん病状が快方に向かっていくような
時空で、生きていく事が可能であるのなら、
どんなに幸せな未来が私を待ち受けているんだろうね。

でも、現実は、あまりにも見え透いているから、
目を開いているだけでも怖くなってくるよ…




m a i l



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