Sun Set Days
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今日も休日で、応募しようと思っている小説(ふたつ)を黙々と手直ししていた。 好きでやっていることなので、基本的には楽しいのだけれど、そのときどきの体調やらなんやらで推敲する箇所がきっと変わってくるのだと思う。そしてだからこそ、どこかできりをつけないとならないのだろうなとも思う。きりとかけりとかはきっととても大切なことなのだ。 だから、どこかできりをつけて、次の別の話をまた考えよう。 ひとつ書くと、そこでうまく形にできなかったものを形にできるようにという気持ちがやっぱり強く出てくるものだし。
今日は、『N43゜』(仮称)のプロローグ部分を。
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プロローグ
もし、人工衛星の小さな窓から地球を見ることができても、その小さな海辺の町を見つけることはできないかもしれない。けれども、たとえばその窓の傍らには小さなボタンがついていて、それを押すと見たい場所を拡大して映し出すことができるとしたらどうだろう。そうしたら、僕はボタンを押して(それはきっと赤いボタンだ)、ゆっくりとその小さな町を目指す。 きっと、町はいつもと変わらずにただそこにあって、古い家々はこれからもずっとあり続けるのだというような表情をして立ち並び、弓状に細く伸びる白い砂浜は繰り返し冷たい波を受けていることだろう。 バンは、まだ散歩をしているだろうか? 誰が、バンを散歩に連れて行ってくれているのだろうか? そこに誰の姿を見つけたら、僕は安心してそのズームのボタンを離すことができるのだろう。 山と海とに挟まれている狭い土地にしがみつくようにしている小さな(けれども良質の)温泉街、町自体が観光地であるのに全国各地の観光ポスターばかりが貼られている古い駅舎、車で五分もしないうちに通り過ぎてしまう商店街、ほとんどすべての子供たちが通うことになる小学校や中学校、細く長い石段を登らなくてはならない神社、欄干のすっかり錆び付いた長い橋。そんな町をかたどるたくさんの光景を、僕は順に見ていくことだろう。 そして、最後にはやっぱり砂浜に戻るような気がする。 何度も訪れたあの砂浜に、ユウコと言葉を交わし、バンを散歩に連れて行った、あのびゅうびゅうとただ風だけが強く吹く砂浜に。 これは、僕の物語で、いまではもう閉じられてしまっている。 その年、僕は十六歳だった。
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お知らせ
今日のBGMはほぼずっとCharaの『夜明けまえ』でした。
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