Sun Set Days
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2002年10月23日(水) 『チェンジ・ザ・ルール!』

 昨日は仕事である適性検査の会社の講習会に参加してきた。
 実際に自社で利用している適正検査についてより深く知るという目的があって参加したのだけれど、ひとつの検査を用いても(もちろんそれがある種の傾向でしかないのだとしても)様々な見方があるのだと知ることができて、とても参考になった。
 もちろん、自ら設問に答えていく適性検査の場合、どうしても回答者の方で嘘をつくというか、自分を飾ることを避けることはできないのも事実だ。とりわけ、採用試験のフローのひとつとしてそのような適性検査を行う場合には、その傾向がより顕著になってくる。それは考えなくても当然ことだ。合格したいと思ったら、よりよい自分というのを見せたくなるのは当たり前のことだろうし、それは他のことだってきっとそうだし(仲良くなりたい人がいるとかそういうときに)。
 けれども、適性検査で知りたいのはその人本来のキャラクターであり行動特性等であるから、基本的にはほとんど考えずに、どんどん回答してもらった方が都合がよい。その方が本来の性格が出てくるわけだし、検査の信憑性のようなものも高まってくる。
 それで、極力そういう「恣意的な」結果にならないための方法というのがいくつかある。
 中でも代表的なものは速度を一定にすることだ。たとえばテープであったり、試験官が問題を読み上げることによって、回答の際して一定の速度を保ち、あまり考えさせないリズムなりテンポなりを作ってしまうことだ。その方法は以前から知っていたのだけれど、なるほどなと思ったのは、「同じテストは入社後にももう一度行うので、ありのまま気楽に答えてくださいね」というようなことを検査の前に伝えるというものだ。問題数がそれなりにはあるので、そのすべてに対して自分がどう答えたのかということを覚えているわけにはいかない。だとしたら、もしその会社に受かった場合、いま行っている検査と入社後の検査の結果に大きな差が出ているのでは何かと不都合があるのではないか。それであればありのままに答えるしかない。受験者にそういった心理が生まれ、精度が高まってくるというのだ。
 これは(他愛のないことなのかもしれないけれど)結構納得することができた。もちろん、入社後に本当に同じ検査を再度行う必要はないのだけれど(ある種のポーズなのであるから)、それでもそう伝えることがある種の抑止力になってくるのだということは実際にそうなのだろうと思う。
(採用の仕事をしている関係上)これまでもいくつかの企業のそのような講習会に参加してきたけれど、それぞれ興味深い内容でそういう話を聞くことができるという意味では、いまの部署にいて得をしているのだろうなと思う。


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『チェンジ・ザ・ルール!』読了。エリヤフ・ゴールドラット著。三本木亮訳。ダイヤモンド社。

 いまたいていの書店で平積みにされている3冊(オレンジ→赤→青)中の青の本。いわずとしれた『ザ・ゴール』の著者の第3作目であり、最新刊。帯にはこう書いてある。


 在庫削減を目的にERPを導入。だが、むしろ在庫は増え、利益を圧迫している――いったい、なぜなんだ!? はたして、クライアント企業の悲鳴を解決できるのか!?

「システムを導入しただけでは、利益にはつながらない。なぜなら、何もルールが変わっていないからだ!!」


 タイトル通り、この本の中では新しいテクノロジーを導入したとしても使う側のルールが従来となんら変わっていなければ、結果としてその旧態依然のルール自体がテクノロジーの導入によって解消されたはずの限界を再度作り出してしまうという状況が描かれている。その際に、このシリーズではおなじみのTOCの理論を用いてどの部分のルールを変化させなければならないのかを特定し、そうすることによってシステムの導入によって利益が上がるということを明らかにすることができるようになっている。それを、いつものように臨場感のある小説仕立てで記してくれているのだ。
 やっぱり、1作目を読んだときのように引き込まれたし、非常に面白く読むことができた。このシリーズは、分厚く、敷居が高いように見えてしまうのだけれど、読み始めると本当に早く読むことができてしまう。未読の方で興味のある方は、ぜひともオレンジの1作目(『ザ・ゴール』)から手にとっていただくことがおすすめ。そうしたら、『部分最適』とか『全体最適』という言葉をやたらと使用したくなることうけあいという感じだ。

 それはともかく、今作ではこれまでTOC理論の披露の場であった工場からソフトウェア開発企業へと舞台を移し、高価なシステムを導入しても成果や利益が上がらないでいるのはなぜなのかということについてひとつの視点を与えてくれている。僕はそういう面には疎いのでなんともいえないのだけれど、これはシステム開発担当者が読むと興味深い内容を内包しているのだろうなとは思う。もちろん、舞台となっているのが1998年であるから、今から考えると随分と古い時代を扱っていると思うかもしれないけれど、問題の根本的なところはきっと変わらないし、システムだけを売り込むのではなく、システムの導入によってどのような問題が解決されるのかということにまで言及されている点(2002年では当たり前のことなのかもしれなくても)が非常に興味深いのではないかと思う。

 問題は次々と起こる。そして、方法や方向性さえ間違わなければ、解決することのできない問題はほとんどないのだろうなということを、このシリーズを読むと思う。

 いくつかを引用。


 私たちはコンピュータが利用できるようになる前から、組織を管理、運営してきました。では、どうやっていたのか。コンピュータが利用可能になるずっと以前から、その環境における限界、障壁に対応した行動パターン、評価尺度、ポリシー、ルールなどが自然発生的に作り上げられていたからに違いありません。
 もし、限界や障壁を取り除いてくれるコンピュータシステムをインストールしても、こうしたルールが古いままだとしたら、いったいどんなメリットがもたらされるでしょうか。
 答えは明白です。それまでの古い限界に対応していたルールに従った行動をとり続ける限り、その結果は、いまだにその限界が存在している場合と変わりありません。(日本語版への序文より)


 それに劣らずクライアントの理解できる言葉を話せることも重要です。コスト削減、生産性の向上、リードタイムの短縮など相手に合わせた言葉で話ができなければいけません」(77ページ)


 スコットは自らの経験を通して、どうしようもない問題にぶち当たった場合でも、必ずシンプルでパワフルな解決策があることを学んできた。しかし、そのためには視野を大きく持たなければいけない。問題をもっと広い視野から見ることで、初めて解決策が見えてくるのだ。(94ページ)


 テクノロジーというのは必要条件ではあるが、それだけでは十分ではないんだ。新しいテクノロジーをインストールして、そのメリットを享受するには、それまでの限界を前提にしたルールも変えなければいけない。(175ページ)


「バリューを実現する、つまり利益を増やすためには、”テクノロジーは必要だが、それだけでは不十分”(Necessary but not sufficient)ということだ。今年になってから、私たちはクライアントに対しバリューを提供することに傾注してきた。もはや、テクノロジーだけにとらわれていない。クライアントに対し潜在的なバリューを実現し提供するにはどんなことだってする。たとえ、それがソフトウェア会社としての活動の範囲を超えていたとしてもだ」(298ページ)


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 今日は転勤する後輩ともう一人の後輩と3人で、夜にステーキを食べに行ってきた。最近は異動が多くて送り出すことが多いのだけれど、やっぱり同じピーク時期を一緒に働いてきたメンバーがいなくなるというのはさみしいと思う。もうずっと会えなくなってしまうわけではないにしてもそれでも。


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 お知らせ

 いまのTop写真は、車の助手席から撮ったものです。夕方。


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