Sun Set Days
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| 2002年08月29日(木) |
『王国 その1 アンドロメダ・ハイツ』+Cyber-Shot U |
『王国 その1 アンドロメダ・ハイツ』読了。よしもとばなな。新潮社。
この作品から吉本ばななは、ペンネームをよしもとばななに改めたとある。その改めたペンネームでの第1作だけれど、おもしろかった。個人的なツボのようなものにはまるはまらないは別にして、よしもとばななの小説にはいつだってオリジナリティがあるし、オリジナルの文体があるのでおもしろいのだ。 この話も、色濃い傾向のひとつであるサイキックなどの要素が散りばめられていて、自然との繋がりのようなものについても繰り返し言及されている。ある意味、最初から根底にあって、少しずつ表面に出てきたよしもとばななの王道の要素だ。
ツボにははまらなかった。ツボにはまるのは槍投げのラインみたいなもので、しかも90メートルから100メートルの間にぴたりと落ちるときとか、こちらの予測できないくらい遠くへの新記録を達成したときに限るというようなところがあるので、なかなか難しいのだ。そのときの読み手の側の環境や状況によっても変わってくるだろうし。 いずれにしても、これは作品のよしあしの話ではなくて、自分にとってツボにはまったのかどうかという話。 おもしろいのだけれど、ツボにははまらない。でもおもしろい。うまく言えないけれど。
よしもとばななの小説に出てくる主人公たちは、たいていの場合「楽観的で肯定的」で、それが読んでいて安心することができるところなのだろうし、主人公がそうやって安定し、結局は自らの足で立つことができる強い人であることに共感したくなるようなところがあるのだと思う。主人公たちはしばしば社会的な少数派に属し、自らと世界との間に柔らかな境界線を引くようなところがあるけれど、誰もが多かれ少なかれそのような線を引いているのだろうし(それが外よりなのか内よりなのかは別にして)、そういう境目に焦点を当てている物語に惹かれる面はあるのだと思う(そういうのって意外と少ないような気がするし)。 そして、よしもとばななの主人公たちにはその線の内側で心落ち着く場所を見つけていくことで終わらず、大きな流れに身を任せ、その内側から外側に出て行こうと決意するようなところがあって、そういうところに本能的に惹かれてしまうところがあるのだろう。理屈じゃなくて、もっと根源的な部分で。 人は(基本的には)日陰よりは日向に向かうようにできているのだろうし、そういう意味でゆがみながらも安定しているというのは、得難く貴重な性質だという気がする。
そして、物語の中ではわかりあえている人たちがしばしば登場するのも大切な要素なのだろう。それが家族であれ、恋人であれ、友人であれ、ぴたっとはまるわかりあうことのできる人たち。いまそういう人が近くにいないような気がしている人は、いつかあるはずのそういう人との邂逅に思いをめぐらすのだろうし、いまそういう人が近くにいる人は、自分にとっての特別なその人たちとの関係に、自らの心がどんなに穏やかな心持ちを抱かせてもらえているのかを再認識するのかもしれない。 よい物語って、ストーリーをおうこともそうだけれど、いろいろと思いをめぐらせるようにしてくれるところにもあると思う。
その1というからにはその2があるのだろうし、劇的というよりはどこか淡々と、常にメインストリートというよりは路地めいたスタンスで進んでいくのだとも思うのだけれど、主人公の雫石(またもや変わった名前!)がどうなっていくのだろうとは思う。
いくつか、気に入ったところを。
そんなふうにふいに恩寵のように、きれいな雲が空をその輝きでうめつくしたり、冷たい一杯の水ののどごしが全ての疲れを夢のように取り去ったり、土に種が混じっていたのか、どこかから飛んできたのか突然咲いた一輪のタンポポが金色に光って風に揺れたりしているのをよく飽かずに眺めたものだった。山を降りても、そうしたものとのつながりを保っていることによって、思っていたよりもずっとひんぱんに、私の日常はもと通りの至福に満たされるようになってきていた。(38ページ)
そして、サボテンはあなたのことが大好きです。サボテンはもうあなたを選んでいます。(49ページ)
私たちはいつまでも夏休みの子供みたいにしていていいのだ。 光の中で遊ぶだけ遊んで、肉体が衰えたら死んでいけばいいのだ。 私はベッドの中で清らかな気持ちで目を閉じた。(104ページ)
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そして、今日Cyber-Shot Uを買った。 実はここ数週間いくつかの店を回って探していたのだけれど、どこでも売り切れだったのだ。 今日入った店でたまたま見つけ、すぐに購入(全色置いてあった)。 Cyber-Shot Uは本当に小さい、タバコの箱よりも小さいデジタルカメラだ。色が3色あるのだけれど、選んだのはシルバー。
デジタルカメラはひとつ持っているのだけれど、今回Cyber-Shot Uを購入したのは、より気軽に持ち運びができるかなと思ったからだ。僕が持っているデジタルカメラはレンズ部分が飛び出ている大きなやつなので(Cyber-Shot505)、たとえば散歩のときにはほとんど持ち運んでいたとしても、出勤時などには持っていけないときもあったのだ。けれども、Cyber-Shot Uなら、スーツのポケットに入れてもかさばらないし、カバンのサイドポケットに入れてもいい。いずれにしても、気軽に取り出せて、気軽に写真を撮ることができる。 そういうのに憧れていたのだ。 デザイン的には、もう少しメタリック感が欲しかったりするのだけれど、現状では本当に小さくてそこそこの画素があるデジタルカメラはこれと他社のカードタイプのやつ(正式名称は忘れてしまった)しかないので、Sony製品好きとしてはCyber-Shot Uの方を選んでしまった。 それにしても、これはいまものすごく売れていて、結構みんな首からストラップでぶらさげているみたいだ。 実際には、首からぶら下げている人を見たことはないけれど。
ただ、これで本当に気軽に思ったときに写真を撮ることができる。画素は確かに約130万とそれほどでもないのかもしれないけれど、基本的には趣味の写真だし、大事なのは切り取り方だけだと思っているので、あんまり影響はないだろうなと思う。もちろん、画素は高いに越したことはないのだけれど、そうじゃなくてもオッケーだというところだ。
しばらくはいろいろとぱちりぱちりとやってしまいそうだ。 通常の電池は約13時間充電とのことだったので、別売りの急速充電器も購入する。そちらで充電すると約1時間30分とのことで、その差は一体……とちょっとだけ思う。 カバーを開けると電源が入るので、さっきから意味もなくカバーを開けては電源を入れてみたりしている。
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お知らせ
あと2年もしたらいったいどんなデジタルカメラが、携帯電話が登場するのでしょう。
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