解放区

2014年09月30日(火) 祖母、転院。

祖母がてめえの病院に転院して来た。正直、ほぼ老衰でもう人生としては終わったのかと思ったが、驚異の生命力で生き延びて来た。

前の病院も初めは自然に看取ろうとしていたのがよくわかったが、状況が落ち着くにつれて次の栄養の手段を考えだした。正直、点滴だけしていたら栄養不足で死ぬからだ。

通常は、まず行うのは「経鼻栄養」だ。鼻から胃に管を通して、流動食を胃に直接流し込む。一時的に弱っている場合は、この経鼻栄養で栄養状態が改善することで、自力で食事をとれるところまで回復することがある。ただし老衰の場合は全く期待が出来ないし、そもそも「一時的に弱っている」のか「老衰」なのかはてめえらプロでもよくわからんことがある。

祖母に経鼻チューブが留置されようとしたが、全く入らなかったらしい。これは解剖学的な問題で、そういう人がたまにいる。

前の病院は、胃カメラを使用して経鼻チューブを胃に入れたそうだ。そういう方法があるということは初めて知った。というのは、通常はそう言う場合は下記の理由もあり、そこまでの方法をとらずに栄養自体をあきらめるからだ。

しかし考えてみると、チューブを留置するためだけに胃カメラをするのはかなり苦痛を伴う。多くの病院は1週間ごとにチューブの交換を行うので、それだと毎週胃カメラをする必要があるが、てめえなら毎週胃カメラを飲むなんて死んでもイヤだ。死んだ方がマシだ。いくら意識状態がはっきりしない祖母とはいえ、これは一種の虐待ではないか。

もちろん「やらないと命に関わるだろ」という意見は理解するが、老衰に対してそこまでするか?

まあともかく、経鼻チューブを留置したことで祖母の容態は安定した。人間としての尊厳は置いといて、とりあえず命はつながった。

しかしその代償もある。意識状態がはっきりしないとはいえ、祖母は無意識のうちにだろう、その大切なチューブを手で引き抜いた。

結果として、チューブを抜かないように両手が拘束されることとなった。そして、再度チューブを入れるために胃カメラ。しつこいが、てめえなら死んだ方がマシな仕打ちである。

そこで次に考慮されるのが「胃瘻」である。老衰に対する胃瘻にもともと懐疑的であったてめえは胃瘻造設には反対だった。

かといって、経鼻チューブをこのまま続けるのか。経鼻チューブを抜いたら、遅かれ早かれ祖母は死ぬ。残酷に聞こえるかもしれないが、てめえは正直それが一番自然だと思ったが、叔母は違った。「実の親である以上、明らかに死に至る処置は許容できない」のだ。てめえは実の親でも自然のままが良いけど。


しかし残念なことに、腹部CTでは胃と腹壁の間に肝臓と腸管が横たわっており、これまた解剖学的に胃瘻が作れない体だということがわかった。

とすると、残酷だが抜けるたびに胃カメラで経鼻チューブを入れ続けなくてはならない。

そしてこれが一番大切なことだが、「経鼻チューブを留置したままの患者」は、基本的にどこも受け入れてくれないのだ。


経鼻チューブを留置したまま、そして両手を拘束されたまま、祖母の容態は安定した。安定しただけで、昔のように歩き回る訳でもなく食事がとれるようになった訳でもない。

そうして3ヶ月が過ぎた。


よく知られていることだが、入院して3ヶ月を過ぎると病院に入る報酬がぐっと少なくなるため、病院側としては経営上困るのだ。「3ヶ月以上入院していれば退院か転院しなくてはならない」のは、法律でそう決まっている訳ではなくて病院側の収入の問題である。

そんなわけで、病院側としてはなんとしても退院あるいは転院させようとする。

しかし、祖母の場合は自宅退院は無理。転院も、経鼻チューブであるうちは基本的に無理。病院側が経鼻チューブの患者に早めに胃瘻を作ろうとするのは、基本的にこう言った事情がある。


そんなわけで、てめえの病院で引き取ることにした。「公私混同」と思われるかも知れないが、てめえの病院は職員の家族であることに関わらず、こう言ったややこしい複雑な事情を抱えた患者の面倒を見ることが得意なのだ。


まあ残念なことに、転院してすぐに重度の肺炎を来しててめえが病院に張り付き状態になり、叔母から「何のために転院させたのか?」と言われたり。まあいろいろあったけど、肺炎もなんとか治り、明日胃瘻造設予定。そう、てめえの病院で再検査した結果「胃瘻できるんじゃね?」となったのだ。ほんまに出来るのかどうかは明日を待たないといけないが。

家族に胃瘻なんて作りたくなかったけどな。でも、拘束も解かれるし(実はてめえの病院に転院してからは拘束していない)、なにより胃カメラからの呪縛から解かれるのが一番の救い。まあ、人生いろいろありすぎてもうお腹いっぱい。ちょっとゆっくり癒されたいわ。


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