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2005年04月10日(日) |
Factory58(キリリク/樺地・跡部) |
「L&C」
俺は生まれながらに銀の匙をくわえた男。誰もが俺の強運を疑わず、俺自身も自分の力を疑わず、欠けたることなき望月の如く、人生は順風満帆、それが俺、「跡部景吾」だったのに。
どうにもならないことがある。
学校に行くまでに一つも赤信号にひっかからなかったら、五十数える間に白い車が目の前を通ったら、帰り道に散歩している柴犬に出くわしたら。普段は気にも留めない事を、心に浮かべ、そうしたら、それが起こったら、なんて思う時に限って、解けてしまった靴紐を結んでいたら赤に、いつまでたっても横切る車は赤や青や黒い車、毎日散歩しているのを見かけるあの犬も見かけない。だから俺は口をつぐんで、あぁ今日も失っちまった、タイミングって奴をよ、なんて思いつつ、後ろを振り返れば、俺の荷物と自分の荷物、でかいバッグを二つも抱えて、ちょっとした強力みたいに見えなくもない、後輩を、幼馴染を、目下俺の心を不法占拠しているあいつと目が合う。ぼんやりした眼差しに、俺はロクデモない事を話しかけたり、そのまま黙って前向いたり、なんだか腹が立ってきて罵ったり。それでも、毎朝、お前と会って、毎日、お前と帰ってる。言おう、言おう、いっそ言ってしまえば楽になる。その結末がどうであろうと、解放されるに違いない。 だけどGOのサインがなかなか見えない。
そうだな、今日の帰り道、目の前を極彩色のでかいトラックが通ったら。
通るわけねぇじゃねぇか。そんなもの。そう思いながら、俺はいつもみたいにあいつと一緒に部室を出る。この前まで真っ暗だったのに、日が長くなったなぁ、なんて切り出しはまるで初対面同士の会話みてぇなつまらなさで、案の定あいつからは短いいつもの返事しかなく、本当にお前って奴は会話を広げようって努力がねぇのかよ、って逆ギレしそうになった時。
大きなクラクション。立ち止まれって後ろをみると、あいつの後ろにピッタリとまったトラックの窓から、人相の悪い角刈りのおやじが顔をのぞかせる。でかい声で、おい坊主、ここぁどこだと言われ、ア〜ン坊主だと?とムカつく前に、あいつが、よりにもよってあいつが、すらすら答えている。なんだ、一本間違えちまったなとでかい声。ありがとよと去って行くそのトラックは、青森のねぷた祭りみたいな模様で、ありえないぐらいギラギラしていた。 なんだ、あれ 御意見無用なんてアナーキー全開な主張をでっかく書いたトラックに俺の運命を委ねられようか(もちろん反語)
そうだな。今、この時に、お前が
「跡部さん」 息が止まる。おい、俺の幼馴染が超能力者だなんて聞いてないぞ。 「びっくりしましたね」 あぁそうだな、こんな住宅地にあれはないよな、なんて空々しく呟き、歩き出す。 「あの」 立ち尽くしたまま、動かないあいつに、どうしたんだよ、と苛立ちの声を上げる。 「話が」 歩きながら話せばいいだろう 「それは・・・」 あいつが首を振る。こいつ、人の脈をどれだけ乱せばいいんだ。どうなってるんだ、これって。俺は拳を握り締める。さっき俺は思ったんだ。 今、この時に、お前が俺に歯向かったらって。 だって、そんな事めったに起きないことだろう。 俺は無視して歩き出す。足音、あいつが近づいてくるのを感じる。ほら、やっぱり。俺の言う事をきかないわけないんだ。 「待って、ください」 腕を掴まれる。振りほどこうとしてもがいても、あいつは手を離さない。 なんだよ 睨みつける。いつもならそれで済むのに。ちょっと申し訳無さそうに視線を落として、それでも俺から手は離さない。 「決めたんです」 なにが 「もし、今日、帰りにおっきなトラックを見たら」 なんだ、それ、と呟く事もできず、俺は目を瞬かせる。 「見たら、話そうと・・・」 そう、そう、そうだった。俺たちは幼馴染、竹馬の友、全然違ってるように見えるけど、どこかが重なる、どこかが似通っている。なぁ、ともすれば、だとしたら。
「樺地」 掴まれている腕を引く。あいつの視線が上向く。 「お前の話ってやつを、当ててやろうか」 あいつの口がぽっかり開く。驚くように、呆れたように、困惑したように。 「なんだ、その顔は。信じないのか?俺はな、お前の事ならなんだって分かるんだからな」 インクに紙を浸した時みたいに、あいつの顔色がみるみる変わる。
もしかしたら、そうかもしれない。 世界は金色に輝き、眩い一筋の光に照らされる俺たちがためらう事なく腕を絡め交わす熱に、近づきつつあるあの自転車の奴(あれはうちの部員か?)が驚いて盛大に転ぶかもしれない。 もしかしたら、それではないかもしれない。 世界は暗闇に閉ざされ、俺は目が眩み、驚きに力を失ったあいつから腕をもぎ離し、よろよろと道の真ん中に出て、近づきつつあるあの自転車の奴(あれ鳳じゃないか?)にぶつかるかもしれない。 どっちにしろ、自転車の奴はとばっちりを食らうわけで、それも、俺が告げるのも、すでにアカシック・コードに描かれている運命に違いない。
息を吐き、俺は話し出す。 学校に行くまでに一つも赤信号にひっかからなかったら、五十数える間に白い車が目の前を通ったら、帰り道に散歩している柴犬に出くわしたら、あいつに言おうと思った事を、今、言葉にする。
私の日記のカウンター5万番目を踏まれたミナ様から。 『「俺エイド☆文体の樺跡。景吾さんのハートキュンキュン物語。俺のハートを盗んだ憎くてかわいいあんちくしょうを、むしろ俺がゲットしたい!!!待っていやがれコノヤロウ!!!!」と言う感じのラブコメ風味』とのリクエストでした。
いろいろと考えまして「電波・改行が少ない・意味不明の言葉遣い」というのがうちの日記なのかなと・・・あとラブコメってのは悩み・すれ違い・追っかけだと思いました(不慣れな分野なもんで・・・) というわけでかような話となりました。 ちゅうか景吾はアカシックコードとか本当は言わないと思うよ!(笑)そんな中学生あかんやろ・・・でもトンデモ本とか読んでてもいいかもしれない・・・。
ミナさん、去年の冬から延々お待たせして申し訳ありませんでした・・・ごめんなさいね・・・。
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