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2004年07月18日(日) Factory44(樺地・跡部/未来系)


暑いなぁ
跡部さんは叫ぶと俺のベッドにばったり倒れこむ。俺の部屋は西日が射すので、夕方のこの時間が一番暑い。外に出ますかと声をかけると、今、帰ってきたんじゃないか、とごろりと寝転がってあおむけになる。
俺は窓をガラガラ開けるが、風一つなく、外の熱がじりじりと部屋に流れ込むだけだ。それでも閉め切ってるよりはましだ。
クーラー買ってないのか
頷きながら、扇風機のスイッチを強に入れた。
お前、毎日こんな暑いところでよくいられるなぁ
ベッドから降りた跡部さんが扇風機の前に座る。前にあった時よりも少し長くなった前髪が風にあおられる。
いまどきこんな古い扇風機珍しいよな。実家の?
首を振り出す扇風機のレバーを固定して、跡部さんは自分にばかり風を向ける。俺が隣に座ると、なんだよ、と睨む。
風がきません
あぁ、そう
でもレバーを解除しない。ぶーんと扇風機のうなる音だけが部屋に響く。跡部さんは気持ちよさそうに目を閉じている。


明日、日本に着く、と電話があったのは昨日の明け方だ。どこにいたんだろう。電話の声は遠く、これからまた乗継だと言って、俺に到着時間だけ言って切れた。迎えに来いとは一言も言わなかったが、まぁそういう意味なんだろう。
幸い大学はまだ休みだし、バイトも入れてなかった。
久しぶりに見る跡部さんは、少し痩せて、髪が伸びて、到着ゲートから降りてきて俺を見つけた時に浮かべた笑いにもちょっと疲れがにじんでいた。その場でぎゅっと抱きしめたかったけど我慢した。跡部さんは一緒に歩いているとあれ、あの人ってと振り返られるぐらい、有名になっていたから。
車に乗ってから、キスをした。肺の奥にある空気まで吸い込まれそうな深いキスだ。跡部さんはそのまま俺の方にのしかかって来たけど、ここは駐車場だし、あと10分もしたらまた追加料金がかかるから、両肩を掴んで押しのけた。
それがまずかったのか、跡部さんはここに着くまでずっと唇を結び、俺が話しかけても目を閉じて寝たふりをして、しまいには本当に寝てしまった。


暑い
ぱっちりと目を開けると、跡部さんは着ている半袖のシャツのボタンをねじるように外しだす。袖から腕をぬき、丸めたシャツを扇風機の向こう側に放り投げる。あのシャツを洗ってアイロンをかけるのもまた俺なんだろうなぁ。
後ろに手をつくようにして、跡部さんはむきだしにした上半身を風にさらしている。
射しこむ陽射しに跡部さんの半身が蜂蜜色に染まる。
ずいぶん、やけましたね
跡部さんの上腕は、試合中に着ているウェアの袖のあたりからはっきりと色が変わっている。
試合はほとんど屋外だからな。しかたねぇけど
かっこ悪いよなぁ、跡部さんが捻った腕に顔を近づける。俺が身体を寄せると跡部さんは目だけを上げ、また伏せた。伏せられた瞼がほのかに紅く色づいているのは、肌が薄くて血管が透けているせいだろう。
模様がついてますよ
跡部さんの腕に触れ、くっきりした肌色の境目を指でこすってみた。陽に焼けた両腕や首筋や顔は、たっぷりと濃い蜜を塗られたようにつややかだ。
面白いなぁ、お前って
その瞳がぱっちりと開いて、俺を見つめる。
なにがですか?
なにがって、全部
跡部さんの口元から磨かれた小さな真珠みたいな歯がのぞき、俺の顔に息がかかる。
だから飽きないのかな、お前に
柔らかい髪を梳く。跡部さんの目が細くなる。しなやかな身体に腕を回し、背中に浮かぶ突起を撫でる。
ゆっくり床に沈み、被さる様にキスをした。どれほどこの人に飢えていた事だろう。唇に触れ、頬に触れ、額に触れる。競り上がる欲望が身体を重くする前に、横たわる跡部さんの脇に身体を落とした。
俺も飽きませんよ、跡部さんに
寝返りをうってこっちを向いた跡部さんと息が交わる。伸ばした指先で触れる頬のなめらかさは昔から、この人に触れた最初の時から変わらない。
あったりまえじゃねぇか。バーカ
跡部さんの拳が俺の頭を小突く。
この俺に飽きるなんて贅沢、お前に許すものか
傲慢に響く言葉の向こうに、垣間見えるものがある。それは俺に向けられる瞳の揺れで分かる。
跡部さんの下に手を差し入れる。引寄せるように力を入れると、ずるずると身体を寄せ、俺の胸の上にぺったりと片頬をつける。
暑っ苦しいな
こんなの、と呟く人の強張る肩や背中をゆっくり撫でる。
掌の下の緊張に感じる不安や迷い。跡部さんも俺も同じものを抱いている。距離が離れてるとか離れてないとか、会えるとか会えないとか、信じてるとか信じてないとか、そういう事じゃない。ただ漠然と不安を覚える。この先に続く時間の長さに、未来に、不確かなものに足が竦み、怯える時がある。
それでも。

跡部さん
俺は跡部さんに向かって、ある言葉を言う。跡部さんはパッと顔を上げ、ムッとして眉根を寄せると、拳固を作る。振り下ろされる前に捕まえて、握り締めた拳を解かせ、指を絡める。
お前、そういう事言えばいいって思ってるだろう
言えばいいって?
言えば俺の・・・気分が良くなるとか
跡部さんの気分より、俺の気持ちの問題です
生意気な口ききやがって
あぁ昔はこんなんじゃなかったのに、と跡部さんが呟く。
俺の素直でかわいい従順な後輩はどこにいったんだろう
いつもいますよ、ここに
絡めた手を引寄せて手の甲に口付けした。
俺の後輩はそんなことしなかった
そうですね。できませんでした
触れられず、思うことさえ怖れていた頃もあったけど。今は違う。こうしてぎゅっと手も結べる。
俺はこの手を離すつもりはない。なにがあっても。この先に何が起こっても。その事を知って欲しいから言う。何度でも。
跡部さんが、す・・・
自由になっている手で跡部さんが俺の口をふさぐ。
分かってること何度も言うな
跡部さんの顔がすぐ目の前にくる。
こんなに真っ赤になって。聞いてるこっちの方が照れるだろ
俺の耳を跡部さんはぐっと引っ張る。
照れてるんですか
跡部さんは苦いものでも噛んだような顔つきをする。
もう何にも言うな、バカ
その人が愛しくて堪らないから、俺は言うとおりに、何も口にせず、ただ言葉の代わりに、力をこめて抱きしめた。

花が開く。腕の中で溢れる蜜に溶けてゆく。







★あの子は陽に焼けたらどんな肌色になるのかなということで・・・。
大人が好きだと言ってくださった皆様への感謝の念とともに。
(時間があったらそのうち最後までみっちりと・・・ね・・・)★




 

 

 

 

 

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樺地景吾
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