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2003年11月17日(月) |
Factory29(樺地・跡部) |
あいつ、どこまで探しにいったんだろう。
俺はジローの奴が行きそうな場所を、あいつが探しに行きそうな場所を、うだうだ巡っている。 ほっとけばそのうち帰ってくる。待ってればいい。珍しく顔を出した監督が、樺地と対戦してやれなんて言い出したからって、俺がここまでする必要ないのに。
もう学校内で探す場所はない。仕方がない。俺の足は学校から離れる。部活中に、なんでこんな事。
思いがけなくて、予測しにくくて、読みにくい。あいつのプレイはあいつそのものみたいだ。 でも勝つのは俺。ゲームを支配するのも、勝つのも全部。まだまだ格が違う、それを思い知らせてやるって監督にも言ってやった。 分かりにくいけど、分かる。打ち合ったボールの行方も、どうでるのかも、あいつは駆け引きが苦手だから、そんなところが弱い。
コートの中の事なら、それぐらい、簡単に分かるのに。
あんまり手入れの行き届いてないテニスコートがフェンス越しに見える。何人か打ってる奴が見えた。あいつはいない。 こんな所まで来てるのか。分からないけど、なんとなく、そんな気がしたから。 「樺地」 だから大声で叫んだ後で、傍らの茂みがガサガサと鳴り、あいつが姿を現したからって、別に驚いたりしない。呆れはしたけれど。 「こんなとこまで来てたのか」 樺地がいつもみたいな返事をする。 「ジローだって、こんな茂みの中で寝ねぇだろうよ」 首を曲げて肩をすぼめるようにして俺を見下ろす樺地の頭に、舞い落ちた葉っぱがくっついている。 「頭」 指差してやると気がついたようで、髪をばさばさ手で払う。 「まだついてる」 樺地が適当に髪をはらってもまだ取れない。仕方がないから手を伸ばす。樺地の髪は短くて見た目より柔らかい。毛髪の間に入り込んだ小さい葉を俺は取ってやった。 「これでいいや」 屈んでた樺地の首筋を俺はぴしゃぴしゃ叩く。なんとなく手が滑ってそのまま樺地の耳たぶに触れる。柔らかくて冷たい。ふいに憎らしくなって軽く引っ張った。 「監督が、お前と試合しろってさ。行くぞ」 足音が続かない。振り向いたら、まだ俺が引っ張った側の耳を押さえて立っていた。 「なんだよ。ほら、来いよ」 俺の横まで来た樺地はいきなり手を伸ばして、俺の耳をつついた。 「テメェ、何すんだよ、バーカ」 樺地は何にもなかったみたいな素知らぬ顔ですたすた歩いて行く。 「お前はなぁ、俺にやりかえしちゃいけないの。分かってんのか」 あいつの背中を叩く。叩かれた樺地が俺を見る。目の底が揺れてる。面白がっている。 「分かれよ、バーカ」 身体ごと樺地の奴にぶつかってやった。 あぁ、思い知らせてやんねぇと。まだまだ格が違うって。
★中坊。メモ★
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