speak like a...child

 

 

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8:30 - 2003年11月02日(日)

4号線をひた走り「角田 丸森」の標識を左へ。
この先に本当に街があるのだろうかというくらい
深い暗闇に包まれた一本道が続いていた。

十数キロ走ったところでようやく繁華街を見つけ、
些細な不安は解消された。連絡を取り落ち合う。
時刻は20:30をまわっていた。


初めての一人暮らしの佇まいは学生のそれとは
大きく違い、広さと設備だけなら優雅そうに見えた。
しかし、新人が故の激務が部屋を彩る暇を与えない。
果たしてそれは2年後の自分の映し鏡か。だとしたら
滲み出る幸せも少しは分けてもらいたいものだ。

会うのはおよそ1年ぶり、いや、1年半にもなるだろうか。
彼女が卒業して以来ずっと会っていなかったかもしれない。
ただその声の存在感で、そこにいると錯覚していたのだ。


「パチン!」


急に音が弾ける。次いで頬に痛みが伝わった。そして気付く。
はたかれたのだ。何故かは分からない。何か癇に障ったか。
もしくは全くの気まぐれか。分からない。でもそういう子だった。
少しは落ち着いたようだったが、同居した幼さもそのままだった。

社会人の先輩である彼女に就職活動の進捗状況を報告してみた。
業界を告げただけであからさまに機嫌が悪くなり、生意気だと
罵られたばかりかあまつさえ落ちてしまえと言われる始末。

僕はそういう負の感情を表に出すことを極端に嫌う。
けれども彼女はそれを負とは認識していないのだろう。
その純粋すぎる奔放さは時折羨望の対象になるのだ。


宴も跳ねて帰路に就く。次回は霞ヶ関で会う約束をした。
胸いっぱいにためこんだ幸せを抱えて車を走らせたが、
車ごと街に閉じ込めんばかりの深い霧に惑いそうになった。


思えば長い一日だった。

寝惚け眼で白線を捉えながら、
霞んだ夜空の向こうに貴方を想っている。


何かが変わろうとしている。
ふとそんな気がした。



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