当然2番。 - 2002年06月29日(土) うちの実家の居間には仏壇がある。 広い家ならば仏間などにあるものだが、 うちにはそんな余裕はないし、 薄暗い個室に独りぼっちにさせておくよりは 居間で家族といた方がずっといいと思う。 仏壇の上で弟は3歳とは思えないほど凛々しい眼差しで佇んでいる。 今頃は稀代の美男子になって・・・そこまで言うと兄バカ(?)か。 とにかくいい顔をしている。 彼の存在は僕の人格形成を語る上で、欠くことのできない要素である。 生前の少ない思い出は増幅され鮮明に焼き付いて消えることはないし、 いなくなった後で多方面に与えた影響は良いことも悪いことも全て僕に還元された。 生前のことは以前に少し綴った通りである。 今読み返すと非常に拙いが、そのときの想いで書いたものだし、 修正はしないでとっておく。ただ、さらに深く語ることはない。 今日はその後の出来事とそれにまつわるお話。 そして、彼の話はおそらくこれで最後。 彼が他界した後、葬儀などの慌ただしい日々も過ぎて、 平穏な日常が戻った。どこか空しく虚ろな平穏だった。 しかし、そんなかりそめの平穏もあっさりと打ち破られる。 久々に行った幼稚園はまさにこの世の地獄だった。 長く休んでいた僕に周囲の関心が寄せられる。 好奇心を抑えきれない子供たちの言葉が次々と襲いかかる。 休み時間も。帰る途中も。毎日、毎日。 なんて( A )のないヤツらなんだ。 幼心にそう思った。 ( A )なんて言葉は知らなかったが、 そういう感情だったことははっきり覚えている。 泣いてしまえば良かったのかもしれない。 最初に泣いてしまえば、毎日続くことはなかっただろう。 でも泣けなかった。 泣き方を忘れていたのか、 泣いちゃいけないと暗に感じていたのか、 それは分からない。 その代わり、僕は愚民どもを嘲るようになる。 愛想笑いにも似つかない嘲笑を浮かべてやり過ごすようになる。 こいつらを片っ端から、 左手でその首根っこを鷲掴みにして、 右手でぶん殴ってやりたい、 たくさん血が出て、泣きわめいて、ひたすら謝るまで。 人の死を穢すヤツなんて死んでしまえばいい。 そんな黒い衝動に駆られるようになった。 何日か経って僕に対する興味も薄れたころ、 僕のまわりには分厚い壁ができていた。 絶対に他人に心をのぞかせてなるものか。 他人に心をのぞかせるとそこから一気に侵略される。 それは痛いことで、つらいことで。 そう感じていた6歳。 最近になって( A )についても考えることがある。 よく初対面に対する他人行儀がきつすぎると言われる。 もっと楽にしていいんだよって言われる。 一方で、気を許してる友人にはついとんでもないことを言ってしまうときがある。 それで誰かを傷つけることも少なくない。 自分はそういうところのバランス感覚が少し歪曲してると思う。 それがちょっと困り事である。 ( A )のない行動をとったと気付いたとき、 あの日の自分を傷つけているようでいて、怖い。 黒い衝動が自分の影に見え隠れして。 小さな染みがどんどん拡がり、 いつしか全体が蝕まれてしまいそうで。 それならいっそ自分を殺してしまえばいい。 自分を穢す自分は自分に殺されてしまえばいい。 僕は困惑する。 混沌とした宇宙の中に、 内と外の境界線も見つからないまま、 独り在る。 問題.文中の( A )に当てはまる言葉を次から選べ。(5点) 1,レガシー 2,デリカシー 3,カネカシー 4,イトヲカシー
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