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2003年08月22日(金) 歩いて歩いて歩いて、歩いた。

暑い日だった。

久しぶりに。




私は、やすくんと二人で隣町のコインランドリーに
大量すぎて干せなかった洗濯物の乾燥に来ていた。











きっかけは何だっただろう。





洗濯物を抱えて何度も車と店を往復する私に、
「早くしてよ」と、ジュースを飲みながら言ったやすくんのその態度だったか

その前に行ったホームセンターでのやすくんの嫌な一言だったか

もしかして何もなかったかもしれない。

ただ、この久しぶりのうだるような暑さのせいだったのかもしれない。










とにかく















私の中で、何かがぷつんと切れた。













出来上がった洗濯物を車に積むときも
やすくんは車の中で1人で甲子園の中継を見ていた。


黙って、荷物を積み込んで

財布をあけてぱっとつかんだお札をポケットに入れて、

私は、一人で歩いた。



初めての街で

どこに何があるかもわからないのに

私は、駅を目指して歩いた。

財布から掴み取ったお金は6000円。
実家には帰ることができなくても
東京までは出られる。

とにかく、ここから逃げ出したかった。





どのくらいたっただろうか。

視線の先に、見慣れたTシャツを着ている人がいた。


やすくんだった。



「どうしたの?帰ろう」



そう、声をかけてくれたけど

私はその声を聞くことすら嫌だった。

もしかして、心のどこかでやすくんの存在を消そうとしていたのかもしれない。



無視して、つかまれた手を無理やり振り解いて私は歩いた。





何度か道に迷いそうになったけど、
途中で線路を見つけてから、
その線路に沿ってずっと歩いた。

やすくんは車で追いかけてきては、途中で車を止めて
私をなだめたり怒ったりして車に乗せようとしたけど
ただ、

「もうだめ」

と思って歩き続けていた私には

そんな、
優しい言葉をかけるふりとか
怒ったふりとか
逆ギレしたふりをされても

ただ馬鹿馬鹿しいだけで
心が揺らいだり、気持ちが落ち着いたり
そんなやすくんに視線を向けることすらなかった。


数十分歩いたところで
ようやく駅があった。

でも、そこからだと持ってるお金では東京までいけなかった。
仕方がない、次の駅へ行こう。

そうして、また歩き続けた。


何度もやすくんが止めに来たけど、
もう、私には全然関係なかった。
目に入るのは、目の前の道と、目印の線路だけ。



歩きながら、いまさらな感じだけど
何が「もうだめ」なんだろう、って考えた。




やすくんの一言とか、ちょっとしたしぐさとか
そういうありきたりの喧嘩の理由ではないと思った。

同居をしたからこそわかる
家のしきたり、家風、それにその家の常識。

家族には当たり前と思うことでも
私には違和感を感じることがある。
一番感じたのは、義父の傲慢ぶり。
心に余裕があるときは、そのくらいなんてことないんだけど
いろんなことで少しずつストレスが降り積もっていた私にとっては
どれもこれも目をそらしたい、耳をふさぎたいほどのことになってた。

毎日急に変わる予定、思いつきで買ってしまう店の品々
見栄を張りたいがために使われる私たち。

とにかく、すべて。

そして、それを黙認しているやすくんも信じられなかった。


何度か「ちょっとおかしいよ」って不満をぶつけて事があった。
そのときは、私が言ってる以上の不満をぶちまけるくせに
お義父さんの前では、黙って言うことを聞いてた。

それも信じられなかった。

何かあっても、唯一の味方だと思ってたやすくんの
そんな姿が信じられなかった。



とにかく。


考えれば考えるほど、気持ちは滅入っていって
ただ足だけが前へ前へと出た。

炎天下の中汗は噴出すし
素足にサンダル履きだったから
足も痛くなってくるし

でも、疲れはぜんぜん感じなくてずんずん前へ進んだ。










2時間くらい歩いただろうか。




ようやく、次の駅の方向を指し示す標識が見えてきた。

もう、噴出す汗もなかった。

足はずきずき痛むけど、頭もぼうっとしてきたけど

「後もう少し」と思うと自然と体が動いた。





そこで、私は本当にやすくんに止められた。












くやしかった。


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